背後から次々と被さってくるピンクな声はさらにヒートアップしちゃって、私を追い立てる。
一刻も早く、このハレンチ地獄から脱出しなければ!
じゃなきゃ私の方がエロテロリストに屈してしまう!!
タイガの手からリモコンを奪おうとしても、さっと避けられてしまい、また手を伸ばせばかわされる。
それの繰り返し。
きっとタイガは私をからかって、遊んでる。
だって、意地悪な笑顔してるから。
「もらったあああ!」
「うおっ」
勢い良すぎたのかもしれない。
両手で掴みにいった瞬間、バランスが崩れ、そのまま体ごとタイガに突っ込んでいき──
とんでもないトコロに滑り込んでしまった。
タイガの、膝の上に。
「…………」
「…………」
これは……どうしたものか。
急いでどきたいとこだけど、この何ともいえない気まずい空気にタイミングを逃してしまった。
なんで私、タイガの膝の上なんかに、座っちゃってるんだろう。
「あの、えーっと……」
ちらりと上目遣いにタイガを見やれば、改めて間近に、男の勲章に彩られた顔を拝むことになった。
平常時は素晴らしく整った顔が、今は潔いほどにアザだらけの腫れまくり。
どれだけの力で、どれだけの時間殴り合えばここまで酷くなるんだろう。
そりゃこの顔じゃ、女の子には会えない。
会っちゃいけないと思う。お互いのために。
まじまじと、“男の勲章”だらけの貴重な顔を眺めていると。
タイガが、やけに真剣な目で口を開いた。
「マジ、ヤらせてくんねえ?」
さらりと。
言い放った。
とても日本語だとは思えなかった。
新たな言語をマスターしたのかと、感心すらしそうになった。
「今ならヤれる。オメーでもヤれる。すんげえ腹減ってたら、どんなマズイメシでも食えんのと同じだ」
しかしそれが日本語だと脳が理解した瞬間、私は条件反射でヤツに頭突きをくらわしていた。
タイガはおでこを押さえ、悶絶していた。


