気まぐれヒーロー2




タイガは、私を制するように片手を突き出し、やたら神妙な顔でそう言い放った。

どういうことなのかさっぱりわからなくて、小首を傾げる。

タイガは何の説明もしてくれずに、そのままくるっと背中を向け、さっさと浴室を出ていき戸をぴしゃりと閉めた。

また私とジローさんだけが取り残される。

入り口に目をやれば、磨りガラスの向こうにタイガの影が丸わかりなのに。



「いいかー。ごー、よーん、さーん、にー、いちー」



潰れアンコウは勝手にカウントダウンし始める。

そして、ゼロになると同時に──



「オイ、どーなってんだ!!何があった!!」



再び戸を派手に開け放ち、まるで今やってきたかのように焦った“フリ”をしながら飛び込んできた。


……あんまり顔ボコボコにされちゃったもんだから、おかしくなったのかしら。


そんな哀れみの視線を向けていたら、
タイガは「はぁ」と深いため息をつき、同じくらい哀れみたっぷりの目で私を見返してきた。

なんかわからんけど、非常にムカついた。



「あのなぁ、何のためにこの俺が迫真の演技をしてやったと思ってんだ。オメーのために猶予を与えてやったのに、なんで俺だけが5秒過去に戻らなきゃなんねーんだよ。俺をイカレポンチにすんじゃねーよ。なんだよ、誘ってんのかよ。抱いて欲しいんなら最初っから言えよ。マッパで誘惑たぁ、オメーにしちゃ捨て身の特攻じゃねーか。その勇気に拍手を贈ってやろう」



もんのすご~い気だるそうに、ぱちぱちとやる気ゼロな拍手をするタイガ。



うん。もうね。何だろね。


脳細胞、半分逝っちゃってるんだろね。



そうじゃん。

私、すっぽんぽんじゃん。


全部、ぽろりしてんじゃん。



「あっはははー」



即死レベルのうっかりに、笑いながら壁に頭をガンガンぶつけておいた。



やはり明日、地球は爆発するに違いない。



いや、私が大爆発してしまいたかった。