タイガは、私を制するように片手を突き出し、やたら神妙な顔でそう言い放った。
どういうことなのかさっぱりわからなくて、小首を傾げる。
タイガは何の説明もしてくれずに、そのままくるっと背中を向け、さっさと浴室を出ていき戸をぴしゃりと閉めた。
また私とジローさんだけが取り残される。
入り口に目をやれば、磨りガラスの向こうにタイガの影が丸わかりなのに。
「いいかー。ごー、よーん、さーん、にー、いちー」
潰れアンコウは勝手にカウントダウンし始める。
そして、ゼロになると同時に──
「オイ、どーなってんだ!!何があった!!」
再び戸を派手に開け放ち、まるで今やってきたかのように焦った“フリ”をしながら飛び込んできた。
……あんまり顔ボコボコにされちゃったもんだから、おかしくなったのかしら。
そんな哀れみの視線を向けていたら、
タイガは「はぁ」と深いため息をつき、同じくらい哀れみたっぷりの目で私を見返してきた。
なんかわからんけど、非常にムカついた。
「あのなぁ、何のためにこの俺が迫真の演技をしてやったと思ってんだ。オメーのために猶予を与えてやったのに、なんで俺だけが5秒過去に戻らなきゃなんねーんだよ。俺をイカレポンチにすんじゃねーよ。なんだよ、誘ってんのかよ。抱いて欲しいんなら最初っから言えよ。マッパで誘惑たぁ、オメーにしちゃ捨て身の特攻じゃねーか。その勇気に拍手を贈ってやろう」
もんのすご~い気だるそうに、ぱちぱちとやる気ゼロな拍手をするタイガ。
うん。もうね。何だろね。
脳細胞、半分逝っちゃってるんだろね。
そうじゃん。
私、すっぽんぽんじゃん。
全部、ぽろりしてんじゃん。
「あっはははー」
即死レベルのうっかりに、笑いながら壁に頭をガンガンぶつけておいた。
やはり明日、地球は爆発するに違いない。
いや、私が大爆発してしまいたかった。


