気まぐれヒーロー2




「私、知ってるんだよ?見たんだから。ジローさんがすごく綺麗な女の人と一緒にいるとこ。あの人……彼女なんでしょ?」

「……女?」

「とぼけないでよ、あんただってホントは知ってたんでしょ!?知ってて私にあんなことやらせて、影であの人と一緒に笑ってたんでしょ……!!」



私が私じゃないみたいに、湧き上がってくる激しい思いに突き動かされていた。


こんな風に取り乱すのも──

“裏切られたくない”

その恐怖に、勝てないから。


ハイジにあたりながらも、私は縋っていたんだ。

どこかで、期待してた。


私の言葉を、ハイジは否定してくれるんじゃないかって。



「お前さぁ……マジで救いようのねえバカだな」



でも、返ってきた答えは、甘くはなかった。


私は我を忘れて、片手を振り上げていた。


パシンって乾いた音が、教室に響く。

手のひらが、ジンジンする。


人を……初めて、ぶった。


「ってえ……」

「、あ……」


うわ、や、やっちゃった!!

ハイジのほっぺた、平手打ちしてしまった!!


鬼みたいな形相で睨みつけてくるハイジ。
ジローさんに殴られた頬とは反対側を叩いてしまったもんだから、ヤツの顔はすっかり悲惨なことになっていた。


「てめえ……」


凄んでくるハイジに、私も顔を引きつらせて後ずさるしかなく。

ぐいっと腕を掴まれて、「ひっ」って声が漏れた。


緑の悪魔に殺される。

いや、またセクハラ攻撃にあうかも……。

冷や汗が止まらなかった。


「気が済んだか」

「……はい?」


思いもよらない言葉に、私は目を瞬く。

絶対何かしらの制裁を受けると、覚悟していたのに。


「これでお前の気が済んだんなら、行くぞ」

「え?どこに?」

「その女んトコだ」

「はあ!?な、なんで!?」

「会って直接話せ。その方が早ェ」


ビクビクとすっかり小心者になってしまった私を、引きずっていこうとするハイジ。


いや、ちょっと待った。

このいきなりの展開は何!?


今からあの美女とご対面!?

何のために……!!


「や、やだ!放して!!」

「お前、この俺にビンタくらわしといて何だその態度は」

「だってあんたが私を……」

「だから行くんだろうが!ごちゃごちゃ話すより、そっちの方が手っ取り早ェんだよ!!」


やだもう……何考えてんの!?

なんで私が、ジローさんの彼女と会わなくちゃなんないの?


会って、何を話せっていうの?


「やだってば!」

「っぐ、……おま、……!!」


二人で散々取っ組み合いになった末。

ハイジが急に、膝から崩れ落ちた。


「貴様、何てことを……!!」

「わ、ご、ごめん……」


どうやら、暴れまくった拍子に。

私の膝蹴りが……このグリーンボーイのゴールデンボールに、直撃してしまったらしい。


思いっきりハイジの急所に、ダメージを与えてしまった。