「わわっ、ちょ、ちょっと大丈夫ですか!?」
急に肩に重みがのしかかった。
次の瞬間、それがジローさんの頭だと理解した。
もたれかかられた勢いで、さらに素肌が密着する。
頭が一瞬真っ白になった。
……待った、この状況はダメよ!!
っていうか、何!?
ジローさんもノボせちゃったの!?こんな肝心なとこで!?
私もなんだけど!
私もけっこう限界きてるんだけど……!!
いかん。このままでは共倒れ。
二人して沈んで溺れるなんてことになったら……恥!!
しかも家のお風呂で!!アホにも程がある。
万が一救助されても、二人とも素っ裸だし!
そのまま救急車乗せられたりしたら、もう人生終わる。
あっという間にご近所さんに知れ渡るに違いない。
『奥さん聞きました~?花鳥さんちの娘さん、男とお風呂入ってたらノボせて倒れたらしいわよ~。救急車で病院に運ばれたんですって!』
『まあ、なんてフシダラなの!ミダラよ、ハレンチよ!いやらしい!!』
なんて噂が広まって、近所付き合いは消滅。
我が家は世間の冷たい目に晒され、やむを得ず引っ越してヨソの地へ……。
うわあああ!!そんなことになったらお先真っ暗!!
なんとしてでも阻止せねば!
「ジローさん、しっかりしてください!あがりましょう!ゆっくりでいいから立って!!」
「むー……」
「ほら、しゃんとして!夜逃げだけはイヤなんです!!」
ぐったりと私にもたれる彼の肩を掴んで、どうにか起こす。
大きな体を支えながら見ると、ジローさんの目は完全にとろんとしていた。
う、私もくらくらする……。
ダメだ!!私がへばってどうする!
「ジローさん、私につかまってください」
とにかく、この熱気から逃れないと。
ジローさんにはまだ意識があって、私の声も届いてたんだと思う。
指示通り、彼は私の肩に手を乗せて立ち上がろうとした。
でも。
でも……。
その手が、ずるっと。
私の肩から滑り落ちた。


