気まぐれヒーロー2




「だけど、私とハイジは、ジローさんが思っているような関係じゃ……」


言いかけた瞬間、自分の言葉に引っかかって、口を止めた。


ジローさんが不安を抱く“私とハイジの関係”って……何?


私がハイジのもとへ行ってしまうんじゃないかって、あんなふうに零した彼は……一体、何に蝕まれているの?


どうして、私とハイジなの?


タイガは?

飛野さんは?

ケイジくんは?



「知らねえだろ、お前は。出逢う前のアイツを」



ハッとして、彼を見る。


不意に、呟かれたその言葉に。



「俺にはわかる。アイツは、お前を──」



胸が急に騒ぎ出す。

ドク、ドク、と血の流れが逆立つみたいに。


再び、黒に沈みだした彼の瞳。


ジローさんの心は、いつも蜃気楼みたいで。

そこにあるのに、手を伸ばせば幻のように散ってしまう。


掴めない。

必死で追いかけても、するりとすり抜ける。



“アイツはお前を──”



彼の唇が形をつくるたび、心臓が早鐘を打つ。


出逢う前のハイジって……どうだったの?

あのまんまじゃないの?


何だろう……なんか、イヤな感じがする。

肌にまとわりつく、この感覚。


ジローさんが何を言おうとしてるのかは、わからない。

でも──
その言葉ひとつで、私とハイジの今の関係が変わってしまいそうで。

何かを、失ってしまいそうで。

どこか怯えてる。


裁判の判決を待つみたいな、この短い沈黙が……息苦しい。

なのに彼はなかなか切り出さなくて、私をビー玉のような綺麗な目でただ見つめてくるだけで。


もう……なんか、私ちょっと……ノボせ……。



「……あちぃ」



その前に。

本当にのぼせて倒れちゃいそうな、その前に。


ジローさんが、ふらりと私の方に寄りかかってきた。