その炎に、あなたも……呑まれてしまったの?
覆い尽くされてしまうことを、恐れた?
アイツの深い緑ではなく。
揺らめく、真紅に。
その激情の色に。
「どこにも行きません。ジローさんのそばがいい。だって、私はあなたのペットなんだから。おさんぽにも連れていってもらわないといけないし、遊んでもらわないといけないし」
頭なでなでしてもらいたいし。
ぎゅって、何度だって抱きしめてほしい。
たくさん可愛がってほしい。
思いは止まらない。
未来にあなたを思い描くだけで、華やかに色づいていく。
あなたが欲しくて、欲しくて。
私はこんなにも、欲張りだ。
あれもこれも、と手を伸ばしたくなる。
「幸せがどこにあるか、私はちゃんと知ってます。だから、あなたのそばにいます」
ただ──好きだから。
あなたを、愛しいと思うから。
自分でも信じられないほど大胆な言葉を、彼へ贈る。
身一つなのに。
ううん、身一つだからこそなのかもしれない。
遮るものは何もない。
私たちを妨げるものも、今はどこにも。
この体と、この目と、この声だけで。
ハダカのあなたに、真正面からぶつかっていける。
ねえ、ジローさん。
私、勘違いしてしまいそうになる。
こんな私でも、必要だと思ってくれるの……?
嬉しくて、世界が滲む。
瞳に、透明な膜がうっすらと張る。
そばにいてくれと、あなたが言うのなら。
そばにいたいと、私は心から願う。
望まずにはいられない。
いさせてほしい。
あなたが、生きるのなら。
「ハイジは、強いですね。すごく意地悪だけど。意地悪なくせに……その何倍も、何十倍も、優しい。厳しい優しさを持ってる人」
何度も挑まれた。
地面にへたり込んだって、すぐに手を差し伸べてくれるわけじゃない。
立ち上がらなきゃ、置いていかれる。
ぐずぐずして汚れた足を見つめているだけじゃ、アイツは容赦なく背を向ける。
立とうとしなければならない。この足で。
よろめいてもみっともなくても、前に進むのだと。
遥か続く道を見据え、奥歯を噛み締めて立ち上がった、その時。
そこでようやく──アイツは手を差し出してくれる。
よくやったな、と。
暗闇を払う、熱い手が。
もう一度歩めと、光を掲げてくれる。


