気まぐれヒーロー2




ジローさんは、ぴくりとも表情を変えない。
黒い闇に塗りつぶされた瞳で……ただ私を見据えるだけ。

似ている。あの時と。

昨日、黒鷹のメンバーが集う場所で──
“死”という鎖にがんじがらめにされて、抜け出せなかった彼の瞳に。



「ハイジって……あのハイジですか?緑のまりもっこりの?」



私ももう、とぼけたりはぐらかしたりするのをやめて、見つめ返した。

彼の暗い瞳を。


……だけど、こぼれるのは笑いばかりで、なに言ってるんですかって。

唐突すぎるジローさんの問いに、首を傾げるしかなかった。


どうして、ここでハイジが出てくるんだろう。

何を思って、ハイジと私を結びつけるんだろう。


彼の目を探っても、その答えは掴めない。


おかしくて口元を緩めてしまっていたけれど……それも引っ込めて、私も真剣な顔つきにならざるを得なかった。


ジローさんは、本気だ。


それぐらい、私にもわかる。


私の一挙手一投足を見逃さない、彼の目。
ざわざわと胸が急き立てられる。



「ハイジは……私の……」



何て言えばいい?

あなたは、何を望んでるの?


昨日、誓ったのに。


あなたと生きたいって。


今日、あなたも──
私の未来にいてくれると、約束してくれたのに。


“お前と生きる”


そう言ってくれたのに。


私の中にいるのは、ただ一人。

あなただけ。


伝わっていると思ってた。

だからこそ、『私と生きたい』と……あなたは願ってくれたのだと。


私だって、本当は問い返したい。



“あなたの中にいるのは、あの美しい女の人じゃないの?”



聞きたいけど、聞けない。

怖い。返ってくる答えを、受け止めきれる自信がない。

一緒にいられるだけでいい。
ペットでも、そばに置いてくれるならそれだけでいいなんて。

逃げ道を作って、閉じこもってる。


私とジローさんの関係って、何なんだろう。

この曖昧な関係にしがみついている自分がいる。

彼にはっきり位置づけされたくなくて、臆病なんだ。


ハイジは?


ハイジは、私にとって……どんな存在?



「……墓穴掘っちまったな」



不安でぐらつく気持ちに、答えを見つけられないでいると、ジローさんが静かに口を開いた。