気まぐれヒーロー2




やっとだと思ったのに。

やっと……ウルトラマンじゃなくて、会いたくて仕方なかった“白鷹次郎”の顔に戻ってくれたんだって、喜べるはずだったのに。

口から飛び出したのは、好きな人を想う可愛い声なんかじゃなく、夜中に台所でGさんに遭遇した時と大差ない悲鳴だった。


いや、だって……これは……。



“ひどい……”



私を見下ろすジローさんの顔は、正面から見るのが辛くなるくらい、あちこち青黒く腫れたり赤くなったりしていた。

あんなに整ってて、近寄りがたいほど綺麗な顔なのに……どうしたらここまでボッコボコになるんだってレベルで。

あまりの衝撃に、私はしばらく言葉も忘れて彼に見入ってしまっていた。



“ぶわははは!サイコーだなそのツラ!!パンチングマッシーンだ人間サンドバッグだ、ギャハハハハ!”



ジローさんの見るも無惨な姿に胸を痛めてるっていうのに……金色のアイツのバカみたいな笑い声が、非常階段に響き渡る。

ザマーミロと言わんばかりのその笑いにムカッときて、私もこそばしてやろうかと企んだ矢先──



“お前もだろーが”
“あー!!やめろ!!”



飛野さんがタイガの被っていたタイガーマスクを、遠慮なく剥ぎ取ったのだった。

マスクの下から、乱れる金髪と共に現れたタイガの顔は……



“ぎゃあああ!深海魚!!”

“誰が潰れアンコウだコラ!!”



いや、そこまで言ってないけど。


とにかく、タイガの方はジローさんよりもっと腫れ上がっていて、ほぼ原形を留めていなかった。



“ったくよ~俺のファンが悲しむぜ”



ぼやく潰れアンコウを見て、私はやっと気づいた。


彼らがずっとお面やマスクで顔を隠していた理由は、ヒーローを演じるためだけじゃない。

“コレ”もだったんだ。


そしてこの時、ようやく理解した。


ハイジが私に『ショックを受ける』って忠告した、本当の意味を。