やっとだと思ったのに。
やっと……ウルトラマンじゃなくて、会いたくて仕方なかった“白鷹次郎”の顔に戻ってくれたんだって、喜べるはずだったのに。
口から飛び出したのは、好きな人を想う可愛い声なんかじゃなく、夜中に台所でGさんに遭遇した時と大差ない悲鳴だった。
いや、だって……これは……。
“ひどい……”
私を見下ろすジローさんの顔は、正面から見るのが辛くなるくらい、あちこち青黒く腫れたり赤くなったりしていた。
あんなに整ってて、近寄りがたいほど綺麗な顔なのに……どうしたらここまでボッコボコになるんだってレベルで。
あまりの衝撃に、私はしばらく言葉も忘れて彼に見入ってしまっていた。
“ぶわははは!サイコーだなそのツラ!!パンチングマッシーンだ人間サンドバッグだ、ギャハハハハ!”
ジローさんの見るも無惨な姿に胸を痛めてるっていうのに……金色のアイツのバカみたいな笑い声が、非常階段に響き渡る。
ザマーミロと言わんばかりのその笑いにムカッときて、私もこそばしてやろうかと企んだ矢先──
“お前もだろーが”
“あー!!やめろ!!”
飛野さんがタイガの被っていたタイガーマスクを、遠慮なく剥ぎ取ったのだった。
マスクの下から、乱れる金髪と共に現れたタイガの顔は……
“ぎゃあああ!深海魚!!”
“誰が潰れアンコウだコラ!!”
いや、そこまで言ってないけど。
とにかく、タイガの方はジローさんよりもっと腫れ上がっていて、ほぼ原形を留めていなかった。
“ったくよ~俺のファンが悲しむぜ”
ぼやく潰れアンコウを見て、私はやっと気づいた。
彼らがずっとお面やマスクで顔を隠していた理由は、ヒーローを演じるためだけじゃない。
“コレ”もだったんだ。
そしてこの時、ようやく理解した。
ハイジが私に『ショックを受ける』って忠告した、本当の意味を。


