朝から大暴れのお母様は鼻を「ふん」と鳴らし、「あんた、今月からお小遣い半分にするからね」と私に極刑を言い渡すと、階段をもの凄い音を鳴らして下りていかれた。

私はそれを、床に顔面から倒れこんだまま聞いていることしかできなかった。


ヤンキーレンジャーとして記念すべき初出動は、完全なる敗北で終わったのだった。

まだまだヤンキーへの道は、険しかった。

そしてやはり母上様は昔ヤンチャしてただけのことはあって、最強だった。


「何だって私がこんな目に……」


お母さんのおかげでさらなる痛みに耐えながら、私は用意を済ませ家を出た。


ついてない。

そう思うには、もう一つ原因がある。


昨日の夜……またハイジから、電話があった。


私がお風呂に入ってる時だったから、出ることはできなかった。

あがってから履歴でヤツの名前を確認した途端、ため息しか出なかった。


ほんとに、何だっていうんだろう。

かけ直すつもりもなくて、重要なことならまたかかってくるだろうと思ってほっといたら。


今度は電話じゃなく、LIMEが来た。

その内容っていうのが──



『なんで出てくんねえの?お前の声、聞きてえんだけど』



そんな、身の毛のよだつものだった。


悪寒に身震いした私は、返信すべきかどうか一時間弱ほど悩んだ。

だって変だし!!
アイツが何を思ってあんなのを送ってきたのか、予想がつかなかった。


何のために?私の声なんか聞いてどうすんの?

どうせ私とハイジが話したところで、お互い罵り合うことになるのはわかってる。

それを承知の上で、アイツは私と電話したいだなんて思ってかけてきたんだろうか。


私に、『マリモ星人』って言われたいの?


アイツ……Mなんじゃない?

そうだ。絶対そうだ!!

アイツ、ドMだ!!

最初にあの大教室でジローさんと面会した時に、ハイジはMだって発覚したじゃないか!!

アイツ、やたら迫ってきてSを装ってるのは、Mを隠すためだったのね!?

やだ、なんかもう……バカにされてほんとは快感に悶えちゃってるハイジを想像したら、LIMEとか送れないし……!!


っていうか私、自分からアイツに電話したことないな。