それに、私のことをどう見てるのかも、わからなくて。
本当にペット扱いなのか、それとも……。
とにかく変なトコロを触られる前にどうにかしたくて、ジローさんの脇腹を後ろ手でくすぐってみた。
ジローさんは「お、」とだけ声を漏らし、私を抱く腕の力をゆるめた。
チャンス!
この機を逃がすわけにはいかない。
彼が怯んだ隙に腕の中から抜け出し、少し距離を取ってから、くるりと振り返る。
ちょっぴり睨んでやろう、と思ったから。
私が暴れたせいで、湯面が大きく揺れていた。
だけど……視線の先にいるジローさんは、動きもせず、静かな目でこちらを射抜くだけ。
湯船につかったまま、さっきのえっちな彼は何だったんだろうと思わされるくらい、落ち着き払って私を見つめていた。
だから結局、睨むなんてできなくて、大人しくなるしかなかった。
そして──
彼の顔を赤黒く、また青紫に色づける幾つもの痣から……目が離せなかった。
なんて、痛々しいんだろう。
唇には切り傷。口の端は内出血している。
瞼や目元にも細かい傷があって、少し腫れているようにも見える。
どれだけ殴られたんだろう。
本気で殴り合いをしたとしか思えない数々の傷跡は、見ているだけで胸が痛くなる。
いつもは整いすぎて怖いくらいの綺麗な顔が……今は酷い有り様だった。
なぜなんだろう。
気がついたら手が動いていて、私はそっと指先でジローさんの頬に触れていた。
触れるのが怖いくらい、ゆっくりと。
でもジローさんは痛がる素振りもなく、ただ私をいたわるみたいに、その瞳に映すだけ。
──そう、あの時。
ウルトラマンなジローさんと飛野さんと一緒に、大教室のある四階へ着いた時のこと。
“あれ?何か聞こえません?”
廊下の奥、非常階段へ続く扉の向こうから、誰かの声がしたような気がして、私はそっちへ向かった。
空耳かと勘違いしそうなほど小さな声だったけど、確かめずにはいられなかった。
扉を開けた瞬間、視界に飛び込んできた光景に、思わず眉をひそめた。


