気まぐれヒーロー2




それに、私のことをどう見てるのかも、わからなくて。
本当にペット扱いなのか、それとも……。

とにかく変なトコロを触られる前にどうにかしたくて、ジローさんの脇腹を後ろ手でくすぐってみた。

ジローさんは「お、」とだけ声を漏らし、私を抱く腕の力をゆるめた。


チャンス!

この機を逃がすわけにはいかない。


彼が怯んだ隙に腕の中から抜け出し、少し距離を取ってから、くるりと振り返る。

ちょっぴり睨んでやろう、と思ったから。

私が暴れたせいで、湯面が大きく揺れていた。


だけど……視線の先にいるジローさんは、動きもせず、静かな目でこちらを射抜くだけ。

湯船につかったまま、さっきのえっちな彼は何だったんだろうと思わされるくらい、落ち着き払って私を見つめていた。

だから結局、睨むなんてできなくて、大人しくなるしかなかった。


そして──
彼の顔を赤黒く、また青紫に色づける幾つもの痣から……目が離せなかった。


なんて、痛々しいんだろう。


唇には切り傷。口の端は内出血している。
瞼や目元にも細かい傷があって、少し腫れているようにも見える。

どれだけ殴られたんだろう。

本気で殴り合いをしたとしか思えない数々の傷跡は、見ているだけで胸が痛くなる。

いつもは整いすぎて怖いくらいの綺麗な顔が……今は酷い有り様だった。

なぜなんだろう。
気がついたら手が動いていて、私はそっと指先でジローさんの頬に触れていた。
触れるのが怖いくらい、ゆっくりと。

でもジローさんは痛がる素振りもなく、ただ私をいたわるみたいに、その瞳に映すだけ。




──そう、あの時。

ウルトラマンなジローさんと飛野さんと一緒に、大教室のある四階へ着いた時のこと。



“あれ?何か聞こえません?”



廊下の奥、非常階段へ続く扉の向こうから、誰かの声がしたような気がして、私はそっちへ向かった。

空耳かと勘違いしそうなほど小さな声だったけど、確かめずにはいられなかった。

扉を開けた瞬間、視界に飛び込んできた光景に、思わず眉をひそめた。