気まぐれヒーロー2




それを、口を半開きにして眺めているしかなくて。

私と同じ目線にいる彼が、近すぎて。

あんなに望んでいた切れ長の目に、閉じこめられそうになる。

反射的に体が動いて、離れようとしたのに──



「逃げんなよ」



熱い手に捕まって、抗いきれない力で彼の胸の中へと引き寄せられる。

たぷんと、水面が揺れた。

声が、声にならない。
悲鳴として生まれる前に、喉の奥で散ってしまった。


肌が……直に触れ合う。


私なんかよりもずっと頑丈な彼の腕が背後から回されて、強く抱き締められる。

背中に触れてくる温もりがジローさんのものなのか、それともお湯の熱なのか……

熱くて、判別もできない。



「俺が洗ってやるっつったのに……」



ダメ……苦しい、息が……。

耳元で、そんな掠れた声で囁かないで。


急激に跳ね上がる鼓動に、殺されそうになる。


身じろいだところでジローさんが放してくれるはずもなくて、余計に腕に力をこめてくるから、さらに体が密着して……なんだか……。


「なんで?ジローさん、後で入るって……」


そうだ。
さっきの鬼ごっこはちゃんと話をつけて終わったはずだったのに。



“私、体くらい自分で洗えますから!”

“なんでだよ、俺と入りゃいいだろ”

“ムリですってば!!一緒にはムリです!!”

“じゃあ後で入ればいいんだな”



この時ジローさんが口にした『後で』っていうのは、私があがった後のことだと思い込んでいたから。

深く考えずに、了承してしまったんだ。


「お前が嫌がるから、今にしたんじゃねーか」


どうも私の解釈は違ってたらしく、
ジローさんの『後で』は“私の後”じゃなくて、“私が入って、しばらく時間が経ってから”という意味だったらしい。

そんなの、聞いてない。

本当に勝手で強引で、自分の望むがままを通す王様な彼に、文句の一つでも言ってやろうかと腹を括った──

けれど。


「ひゃっ、」


そうする前に、彼が、



「お前……すげえイイ匂いする」



呟くみたいにそう言って、私の首筋に唇を触れさせて……吸いついてくるから。

何も、言えなくなった。


「っ、……」


ジローさんの柔らかい唇が、首筋を少しずつ伝って上へと這ってくる。
そのたびに背筋がぞくぞく震えて、温水の熱とはまた別の……妖しげな熱にカラダが侵されていく。


時折、ちゅっ、と音を立てて吸われて。


その行為に、ビクンと腰がかすかに揺れてしまう。