それを、口を半開きにして眺めているしかなくて。
私と同じ目線にいる彼が、近すぎて。
あんなに望んでいた切れ長の目に、閉じこめられそうになる。
反射的に体が動いて、離れようとしたのに──
「逃げんなよ」
熱い手に捕まって、抗いきれない力で彼の胸の中へと引き寄せられる。
たぷんと、水面が揺れた。
声が、声にならない。
悲鳴として生まれる前に、喉の奥で散ってしまった。
肌が……直に触れ合う。
私なんかよりもずっと頑丈な彼の腕が背後から回されて、強く抱き締められる。
背中に触れてくる温もりがジローさんのものなのか、それともお湯の熱なのか……
熱くて、判別もできない。
「俺が洗ってやるっつったのに……」
ダメ……苦しい、息が……。
耳元で、そんな掠れた声で囁かないで。
急激に跳ね上がる鼓動に、殺されそうになる。
身じろいだところでジローさんが放してくれるはずもなくて、余計に腕に力をこめてくるから、さらに体が密着して……なんだか……。
「なんで?ジローさん、後で入るって……」
そうだ。
さっきの鬼ごっこはちゃんと話をつけて終わったはずだったのに。
“私、体くらい自分で洗えますから!”
“なんでだよ、俺と入りゃいいだろ”
“ムリですってば!!一緒にはムリです!!”
“じゃあ後で入ればいいんだな”
この時ジローさんが口にした『後で』っていうのは、私があがった後のことだと思い込んでいたから。
深く考えずに、了承してしまったんだ。
「お前が嫌がるから、今にしたんじゃねーか」
どうも私の解釈は違ってたらしく、
ジローさんの『後で』は“私の後”じゃなくて、“私が入って、しばらく時間が経ってから”という意味だったらしい。
そんなの、聞いてない。
本当に勝手で強引で、自分の望むがままを通す王様な彼に、文句の一つでも言ってやろうかと腹を括った──
けれど。
「ひゃっ、」
そうする前に、彼が、
「お前……すげえイイ匂いする」
呟くみたいにそう言って、私の首筋に唇を触れさせて……吸いついてくるから。
何も、言えなくなった。
「っ、……」
ジローさんの柔らかい唇が、首筋を少しずつ伝って上へと這ってくる。
そのたびに背筋がぞくぞく震えて、温水の熱とはまた別の……妖しげな熱にカラダが侵されていく。
時折、ちゅっ、と音を立てて吸われて。
その行為に、ビクンと腰がかすかに揺れてしまう。


