気まぐれヒーロー2




「ふふっ」


いろいろ思い出して、ふっと笑いがこぼれた。
それが光沢のあるタイルの壁に反射して、静かに霧散していく。

一人で笑ってるこの光景は、ちょっと不気味かもしれない。
でも──どうせ一人なんだし、いいよね。


彼らと過ごすようになってから、毎日が濃くて、次から次へといろんなことが起こる。

最初はそれがイヤで仕方なかったのに。

今じゃ、そういうのも悪くないかもなんて思い始めてる。


疲れるし、神経すり減るし、ロクなことなんてないはずなのに。

それ以上に──
彼らの底知れない魅力に惹かれて、いつの間にか、離れたくないって思ってる自分がいた。

たとえこの先の道が、困難だとしても。

それでも進むって決めたのは、私自身だ。


彼らといると、大好きだったお兄ちゃんのそばにいるみたいな気持ちになる。

きっと彼らも、お兄ちゃんと志すものが同じだから。

だから、一緒にいたい。



「そろそろあがろうかな……」



人の家で、長風呂っていうのも悪いし。

立ち上がると、水面がゆらめいて、濡れた髪の先からぽたりと雫が落ちた。

脂っぽくて気持ち悪かった髪も顔も、洗ってサッパリした。

湯加減もちょうど良くて、あったまったし。

凡人じゃ一生味わえないような、最高級のラグジュアリー空間を貸し切らせてもらえたんだもん。

こんな贅沢、ジローさんと太郎さんに感謝しなくちゃ。


「ふぅ」と小さく息を吐いて、浴槽から出ようとした──そのとき。



「え……」



片足を上げたまま、私は硬直してしまった。


だって……
数メートル先の浴室のドアが、開いたから。

ひんやりとした冷気が滑り込んできて、肌をなぞっていく。

湯気が立ちこめて視界はぼんやりしているけど、人の気配ははっきり感じ取れた。

この湯気の向こうに、誰かがいる。


そして、ドアが静かに閉まる音がして。


ぼやけた視界のなかに、浮かび上がったのは──

男性の上半身。裸の。


入ってきたのは、男の人だった。


透明な縄で縛られたみたいに、体が動かない。

頭が追いつかなくて、何もできない私の目の前に。


その人はゆっくりと歩み寄ってきて、足を止めた。