気まぐれヒーロー2




それから大教室へ向かっていると、


“お、おお。ぐーぜんだな、お前ら。何してんだ。何かすげえ騒ぎになってるけど”


飛野さんが、とっても白々しく私たちの前に現れた。
まるで今登校してきたかのような顔で。

バルタンのお面は、もう被っていなかった。


今までどこにいたんだろう。

タイガーマスクはどうなったのか。


聞きたいことは沢山あったけれど、飛野さんがあまりにも演技とも言えないほど不自然な芝居を続けるもんだから……黙っておいた。

よっぽどバルタンの件には触れられたくないんだろうな、と思った。



“いや~まいったまいった、今晩の仕込みしてたら来んの遅くなっちまってな~。そーいや、バ、バスケがどうとかそこら中で騒いでんだけど、何かあったのかね君たち”



うう……!
なんて下手な芝居なの……。

ひーちゃん、そうまでして消し去りたい過去なのね……。

なんかもう、泣けてきた。


ハイジにいたっては、田川とのやり取りで限界がきていたらしく──



“ムッキー!!ム!カ!ツ!ク~!!何だアイツは!何なんだあのスカした態度は!!俺はあんなヤなヤロウ、今まで見たことがねえ!!”



怒鳴り散らしながらそこら中の物に八つ当たり。
しまいには窓ガラスを割り、生徒指導の鬼教師・沢北先生と地獄の鬼ごっこを繰り広げるハメになっていた。

田川にバスケ対決を申し込んだ時はあんなに余裕ぶっていたのに、実は相当ストレスが溜まっていたらしい。

ハイジを放って歩いていると、背後から小走りで誰かが近づいてくる気配がした。


“ももちゃん!”


その声を聞いた瞬間、すぐにわかった。小春だ。

驚いて振り返ると、心細さと不安が混じった、どうしようもなく心配そうな表情で私のもとへ駆け寄ってくる小春がいた。


“ももちゃん……ごめんね。ももちゃんが一番苦しい時に、傍にいてあげられなくて……。本当はさっき、ももちゃんのとこに行きたかったんだけど、私──”


息を切らせながら途切れ途切れに話す小春は、一度言葉を切り、私の後ろに立つウルトラマンジローをちらりと見て怯えたように目を伏せた。


小春の言いたいことは、うっすらとだけど察している。

怖かったんだ。ジローさんたちが。


小春にとって、ジローさんやハイジ、タイガは雲の上の存在みたいなもの。
今でこそケイジくんと仲良くやっているけれど、あの裏庭での一件がなかったら、赤髪の彼にだってまともに目を合わせられなかったはずだ。

それに加え、何百という生徒の視線。
ウルトラマンやらタイガーマスクやら、さらに近寄りがたい姿に変身してしまっては、もう小春は見守るだけで精一杯だったんだと思う。