すったもんだの末、ジローさんとの鬼ごっこをどうにか切り抜けた。
「は~……気持ちイイ~」
魂まで一緒にひゅるひゅると抜けていきそうな幸福のため息を漏らしながら、私は最高のリラックスタイムを満喫していた。
そう。
今私は、白鷹家のお風呂を借りて入浴中だったりする。
焼きそばを頭からかぶったせいで、髪も顔も油っぽくなってしまい、そんな私を気遣って、ジローさんたちが連れてきてくれたのだ。
午後の授業をサボってしまったけど、あんな状態で普通に受けるのは無理だろうから、正直助かった。
体温よりもちょっぴり熱めの乳白色のお湯に身を沈め、浴槽の縁にもたれてゆっくりと極楽気分に浸る。
体の芯からじんわり温かさが広がって、こわばっていた筋肉がほぐれていく。
それにしても、なんて広いお風呂なんだろう。
造りは洋風で、形も四角じゃなくて円形。しかもジャグジー付き。
足をぴんと伸ばしたって、余裕余裕。
十人くらい入っても余りそうで、もはや泳げそうなレベル。
浴室自体もだだっ広く、私の部屋の二倍は軽くありそう。
磨き上げられたタイルが艶やかに光り、毎日丁寧に掃除されているのがわかる。
壁には繊細な花模様が描かれていて、全体を上品に飾っていた。
立ち上る白い湯気をすり抜けて天井のライトから降り注ぐ光は、宝石の輝きにも似ていて。
私、本当に日本にいるのかな。外国じゃないのかな。
なんて錯覚に陥りそうだった。
ジローさんのおうちって……私の想像をはるかに超えるお金持ちなんだな。
ちょっと気後れしちゃう。
「お肌スベスベになりそ~」
両手でお湯を掬えば、静かな空間にちゃぷんって音が響いた。
ほんのり桃色がかった白いお湯から甘い香りが漂って、さらなる癒しを私に与えてくれる。
なんかもう……別世界だなぁ。
浴室をゆっくり見渡しながら、そんなことを思っていた。
さっきまで賑やかな人たちに囲まれていたせいか、こうして一人になるとやけに静けさがのし掛かる。
広すぎるお風呂だから、余計にそう感じるのかもしれない。
だからって……
“俺と入るんだろ”
ジローさんの強引な要求は、受け入れられないけれど。
「ふぅ……」
瞼を閉じて、口が湯に浸かりそうになるほど深く腰を沈めた。


