気まぐれヒーロー2




ジローさん……。

何しに、ここに来たんだろう。
どうして、この部屋に入ってきたんだろう。


ハイジ曰く、この教室はいかがわしい目的のための場所らしいのに。

──っていうか、そんな部屋を学校に作るんじゃないよ!!

こんな乱れた人たちと仲間になっていいのかと、早くも後悔しそうになった。

……まあそれは一旦、置いとくとして。


ジローさん、私とハイジがここにいるって、わかってたの……?

もしそうだとしても、どうしてわざわざ?


考えれば考えるほど、答えは闇に隠れて底なし沼みたいに沈んでいく。


残されたのは、私とハイジだけ。


「ったく……コレ腫れるな、絶対。またバカにされんじゃねーか」


グチグチ言ってるハイジに、ふと私は勘づいた。


「あんた、知ってたの?」


私が問いかけると、ハイジは顔を上げた。


コイツ……もしかしたらジローさんが来ること、わかってたんじゃないか。

彼が現れるのを見越して、私にあんなことしたんじゃないのか。

この男、意外と策略深いとこあるし。

そしてその狙いも……もし疑った通りだったら……。


「ねえ、満足?」


自嘲気味な笑みでそう言うと、ハイジは眉をひそめた。


「笑えば?これが目的だったんでしょ?」


私の中で、黒い感情が蠢く。支配されていく。


黙ったままのハイジに苛立ちが募って、矛先はヤツへと向けられていた。


「楽しかった?私をからかって、面白かった?ジローさんに可愛がられて浮かれてる私を、バカにしてたんでしょ?笑ってたんでしょ?よかったね、あんたの思い通りになって。ジローさんはもう私のことなんて、どうでもいいんだよ。これがあんたの計画だったんでしょ!?最後まで私は滑稽で、惨めで……」


止められなかった。

“自分”がどこにいるのかもわからなくて、感情のままに喚き散らす。

全部をハイジに押し付けて、疑心暗鬼になって、ぶちまけていた。

抱えていたものを、全部。


それなのに──



「お前……なんで、泣くんだよ」



ハイジは私が責めるのも、何でもないことのように受け止めて。

純粋で、どこか寂しそうな瞳で……私を、許すんだ。

止め処なく頬を伝う涙の熱さに、自分を恥じる。


「けっこうよく泣くよな、お前」

「……誰のせいよ」


それでもやっぱり私は、素直になれない。


私より子供だと思っていたコイツは私より大人で、悔しくて、自分の幼稚さに腹が立った。


ハイジの前で、涙を流すのは何回目?


いつから、こんなに弱くなったの?