どうして、こうまでされなきゃ……気づけなかったの?
ハイジも、自分を抑えつけてじっと耐えていたこと。
余裕ぶってみせたって、ふざけて笑ってみせたって。
苛立ちにくすぶる炎が爆発しないように……懸命に堪えていたことに。
短気ですぐ手が出て、腕力で解決させちゃうようなヤツなのに。
そんなハイジが、暴力じゃなくてバスケで、スポーツで、立ち向かおうとしてくれた。
それがどういう意味を持つか──どうしてわからなかったの?
私が人を痛めつけることを嫌うのを、ハイジは知ってるから。
だから……
“ケリつけようぜ、バスケで”
私のためを思って、そう言ってくれたのに。
「理由がいる?」
ハイジの視線から逃れて、顔を背けるしかできなかった私に、少し控えめな声がかけられた。
その声に、ぎこちなく目を上げていくと。
「ももちゃんのヒーローは、誰?」
穏やかに微笑む、ケイジくんがいた。
彼の瞳を見つめていると、まるで木漏れ日に包まれているような気持ちになる。
緊張が、自然と溶けていく。
「……カラフルで、ド派手でおバカなヤンキーレンジャー」
なんだか泣きそうになって、私はケイジくんに導かれるまま答えていた。
かなり適切な回答だと思ったのに、
「うむ、まったく俺以外おバカばっかで困る」
と、一番おバカなハイジが嘆き、
「お前のヒーローは俺だけだろーが」
なんて逆ギレ気味なジローさんのセリフにさえ、メロメロになっている私に。
「それが理由じゃ、あかん?」
とびきり優しい笑顔を、ケイジくんは見せてくれた。
そして、絡まっていた糸が今、すっと解けた気がした。
彼らが、こんな盛大なヒーロー大集合の演出をしてくれたのも。
何もかも、全部……
“みんなは私のヒーローなんだよ”
私が昨日、そう言ったから。
こみ上げてくる熱い想いが胸に収まりきらなくて、
もう何も、言えなかった。
今の気持ちを言葉にしてしまえば、壊れてしまいそう。
だから私は、ケイジくんに潤む瞳のまま、
精一杯の笑顔で、『ありがとう』を伝えた。


