気まぐれヒーロー2




ここにいるありとあらゆる人間が、


私の横にいるジローさんを、

私の前にいるハイジとケイジくんを、


求めてやまない。


彼らは、こんなにも多くの人の心を惹きつけてしまう。


もう私と田川の問題なんてどうでもよくて、みんなにとっては“あの白鷹ファミリーがバスケの試合をする”という事実のほうが重要らしい。

しかも、彼らが負ければ土下座という究極のオプション付き。


いつだって話題の中心にいて、

いつだって自由奔放に振る舞い、

いつも羨望の眼差しに囲まれて。

かと思えば、恨みや嫉妬を買うことだってある。

どんな時も、数多の人の目に晒され続ける“彼ら”。


そんな彼らが仕掛けた勝負に、みんなが食いつかないはずがない。

そりゃもう、学校全体を巻き込む大事件になるに決まってる。


さっきからずっと、スマホを構えて動画を撮っている人も、何人もいた。


一年生はもちろん事情を把握しているけど、何も知らない上級生はただ面白そうだからと、簡単に“観客”に回ってしまう。

お色気ムンムンなおねーさま方からは、背筋が凍るような視線をビシバシ飛ばされているけれど。


でも、そうなればもう取り返しがつかない。

こんな大事になるなんて、思いもしなかった。


ありえないほど沢山の生徒たちの視線と、口々に囁かれる無数の言葉が、私の足元を掬い、底無しの沼へと引きずり込んでいく。


急に怖くなって、どうしようもなくなった。


こんなつもりじゃなかった。

こんなはずじゃなかった。


ジローさんやハイジたちに、こんな大きなものを背負わせるつもりじゃなかったのに。



「やめよう、ハイジ……」



怖くて、仕方がなくて。

虚ろにそう一言、零して……
ハイジの腕に、手を添えていた。ぎゅって、掴んでた。



「やっぱり、やめよ……こんなの。いいよ、もう……」

「黙ってろ」



けれど、ハイジは私に振り向かない。
返ってくるのは、そんな素っ気ない言葉だけ。


だからといって、素直に引き下がれなかった。

私なんかのために、そこまでしてくれる──
その優しさだけで、もう十分だって。

言い聞かせてた。



「私、大丈夫だから。何ともないから」

「黙れって」



彼らの想いも何も感じようとはせず、

ただただ、自分のエゴを押しつけてばかりだった。



「もういいんだって!勝手なこと、しな──」
「ブチ切れそうなんだよ!!!」



次の瞬間、ハイジの怒鳴り声と、
非常ベルの側面を拳で叩きつけた硬い音が重なった。

ひ弱な私の言葉なんか、一瞬で掻き消される。

ガヤガヤとうるさい外野の談笑さえも。


そして──肩越しに私を射抜くハイジの眼差しに、胸の奥がぎゅっと固まった。