気まぐれヒーロー2




ハイジは言った。

私に謝れって。


田川達に、そう言ってくれたんだ。


みんなに伝えるために。
私のために。

どうして、そこまでしてくれるの……?



「何に対して謝ればいいのか、わからないんだけど。でもまあ、いいよ。君たちに負けるとは思えないからさ」



徹底的にしらを切る田川。
もう慣れてしまったせいか、怒りも湧かない。


ハイジも同じだったのかもしれない。

妙に落ち着いていて、冷静に田川に告げた。



「決まりだな。勝負は一週間後。……あー、それともう一つ言い忘れてた。俺らはてめえら3人以外とやる気はねえ。3on3でやろーぜ」



ハイジが指した3人は、田川と同じバスケ部の一年生二人。

本城咲妃の取り巻きと一緒にいる、田川の友人たちだった。

あのとき裏庭で、タバコの火で私と小春を脅し、さっきパンを投げつけてきた、あいつら。


長い睫毛に縁取られた優しげな二重の目を細め、田川はその端整な顔に大人びた笑みを乗せた。

窓から流れるそよ風が、栗色の髪をふわりと揺らす。

光を反射してさらりと光るその髪は、女の子から羨ましがられるほど艶やかだった。


ハイジと並んでも背丈はほとんど変わらない。
たぶん田川も、180センチはあるんだと思う。

細身でも肩はしっかりしていて、制服の上からでも何かスポーツをしているんだろうとわかる。

その立ち姿も堂々としていて──
田川の本性を知らない子たちからすれば、まさに“王子様”なんだろう。


私だって、そうだった。

ほんの数週間前までは。

アイツに告白するまでは、『王子様』だって、憧れてた。



「わかった。一週間後の昼休み、体育館で。それでいいかな?」

「ああ。逃げんなよ、エース」



挑発的な姿勢を崩さないハイジに、



「そのセリフ、そのまま君に返すよ──“風切灰次くん”」



田川は、お得意の“優等生スマイル”で返した。


ざわざわと、周囲が騒がしくなっていく。

それまで息を潜めていた生徒たちが、再びお喋りを始めたからだ。

興奮を抑えきれないような声。
瞳の奥には“興味”と“好奇心”の光がいっぱいに広がっていた。



「ってわけだ、ジローちゃん。お楽しみが一つ増えたな」



ハイジがこちらにくるりと振り返る。

その目は活力に満ちていて、まるで山にカブトムシを捕りに行く少年のようで。

ウルトラマンジローを、しっかりと映し出していた。