気まぐれヒーロー2



「んだよ、放せよてめーら。ヤロウに抱きつかれても嬉しかねーんだよ。だいたいよー、ひーちゃん」


まったく反省の色もなく、それどころか悪態をつきまくるタイガーマスク。

そんな悪虎は、なぜかバルタン飛野さんに狙いを定めた。


「さっきから何の役にも立ってねーじゃねーか、いるだけで。ただでさえバルタンは悪役だってのによォ。鳴き声の一つでも出して応援してやれよ」


自分も好き勝手やってるだけなのに、平然と飛野さんに言っていた。


そして……


「な、鳴き声?」

「そーだよ。バルタンってのは、鳴き声で仲間にパワーを与えちゃうんだよ」


バレバレの嘘をつくタイガに、嫌な予感がするのはなぜなんだろう……。


「鳴き声……バルタンの鳴き声……」

「ひ、飛野さん。騙されちゃダメですよ。別にバルタンは、鳴いて仲間をパワーアップさせちゃうような能力なんかないですから」


って教えたのに、飛野さんはまるで聞いておらず、ぶつぶつ呟きながら考え込んでいた。


待って。
まさか……いや、そんなはずがない。

そんなことになるわけがない。

だって飛野さんは大人だし、常識人だし、しっかりしてるし。

……ちょっぴり抜けてるとこはあるけれども。

でもちゃんと場を(わきま)えてるし、硬派だし、純情だし、料理人だし……。


そうよ、ダイジョーブよ!!

いくらなんでも飛野さんが、そんなバカげたこと──




「ジリジリミンミンカナカナ、ツクツクホーシシャンシャンチーゲーキョ」



………………

………!?


言ったよ、言っちゃったよ!!

しかもナニソレ!?


ああ……飛野さん……。



「フ、ファ、……ファーハハハハ!!ウハハハハハ!!ギャハハハハ!!!なんだそりゃセミオールスターじゃねーか!!ウヒハハハハハ!!は、腹がイタイヨーぐるじーよー」

「…………」



タイガーマスクは床に倒れ込み、エビ反りになって笑い転げていた。
号泣しつつ凄まじい大爆笑で、引きつけ起こす寸前だ。

それをバルタン飛野さんは、とっても冷めた目で無言で見下ろしていた。

やっと騙されていたことに気づいたみたいだった。


そう、彼は純粋だったのだ。

どこまでもタイガの期待を裏切らない人だった。


全員がドン引きするなかで、タイガの狂ってんのかと思うほどの笑い声だけが、廊下に延々と木霊していた。


やがて飛野さんは「フヒフヒ」と笑い続けるタイガーマスクの首根っこをむんずと掴むと、ズルズル引きずりながら群衆を掻き分け、廊下の角を曲がり消えていった。

引きずられている間も爆笑していたタイガだったけれど、そのバカみたいな声も姿が見えなくなると徐々に小さくなり、やがて完全に聞こえなくなった。


こうして、タイガーマスクとバルタン星人は退場したのだった。