「、なんだって……?」
「聞こえなかったか?アンタのお得意のバスケで、ケリつけよーぜって言ったんだよ」
ハイジの言葉に、電流が走るような衝撃を受けた。
それは私だけじゃない。
田川だって本城咲妃だって、野次馬の生徒達も、だ。
ジローさん達はこの事態を想定していたんだろうか。彼らが騒ぐ様子は、なかった。
まさか、ハイジの口から『バスケ』なんて三文字が出てくるなんて思わなくて。
ハイジとバスケが、私のなかじゃどうやっても結びつかない。
突拍子もないセリフに、私の目は白黒していた。
「っは、ははは。バスケで勝負?それでケリをつける?……君さ、言ってることおかしいよ」
田川の、不快感しか残らない笑い声によって。
「それで勝った方が正しいって?ありえないだろ、そんなの。たとえ真実を訴え続けたって、負ければ虚言になるっていうのか?バカバカしい、まっとうなやり方じゃないよ」
相手にするのも煩わしいと言いたげに、田川はハイジに言い返す。
それでもハイジは表情一つ変えず、田川から目を逸らさない。
激昂するなんてことも、なかった。
「別に。悪ィ話じゃねえと思うけどな。アンタ、自分が負けるって思ってんのかよ。シロートの俺達に。何も迷うこたねーだろ、勝ちゃあイイんだよ。そうすりゃアンタらの“無実”は証明されんだ、簡単なことじゃねーか。それに──」
ハイジは一旦言葉を区切り、ちらっと周囲の人間を一瞥して、再び田川に視線を戻した。
「そうでもしねーと、納得しねーみたいだぜ。アンタらを支持してるヤツらはよ」
準備は万端だとでもいうように、ハイジの口角がにんまりと持ち上がる。
突き刺した牙は、いくらもがこうと、抜けはしない。
もう少しで仕留められるのに。
追い込んだ獲物を、容易く手放したりしない。
ハイジのセリフに、田川と本城咲妃はハッとして辺りを見渡した。
これまで味方だったはずの同級生達は、もはや彼らの支持者でも、私達の側でもなく。
審判を下す者の立場へと移ろいゆく。
無数の目が、そう物語っていた。


