「みんなもしかして、花鳥さんを信じる気じゃないよね?あたしと大輔を疑うの?」
他の生徒たちが本城咲妃と田川に不信の目を向け出したことに、彼女自身も焦りを覚えているのかもしれない。
本城咲妃は周囲を見回し、必死に潔白を主張し続けた。
「考えてもみてよ!この人達は暴力で人を脅したり、物を盗んだり、ドラッグにだって手出してるんだよ!ヤクザと関わりがあるって、みんな聞いたことあるでしょ?そんな人達と一緒にいる花鳥さんを、信じられるの?」
「そうだよ、みんな見てただろ?花鳥さんが僕を突き飛ばして、馬乗りになったところを!」
本城咲妃が必死にまくし立てるのは、あることないこと──それは単なる“噂”の域を出ないこと。
ほんの数分前までは、彼女と田川の言葉にみんな大人しく従っていたはずだ。
けれど、
今度は彼女の思い通りにはいかなかった。
「コイツはウソつかねえんだよ」
ハイジが、私を守ろうとしてくれてる。
ここにいる全員に、真実を伝えようとしてくれている。
みんなの本城咲妃を見る目には、明らかな“疑い”が宿っていた。
だからといって、私を信じてくれているわけでもない。
正しいのは、どっちか。
みんな、それを見極めようとしている。
だからこそ、迷いも見て取れた。
少しずつ──変わり始めた世界。
絶対に崩れないと思っていた、本城咲妃たちの牙城が揺らぎはじめている。
「計算が狂ったか?」
厳しい顔つきの本城咲妃と田川に、
挑戦的に鼻で笑いながら、ハイジが言った。
「このままじゃラチがあかねえよなぁ。白黒つけてえだろ?」
ゆっくりと──
逃がさないように、ハイジはヤツらを追い詰めていく。
「優等生くん。アンタ、バスケ部のエースなんだってな」
まるで罠を仕掛けるが如く、
ハイジは田川に、自信に満ちた口調で投げ掛けた。
「……だったら何だっていうんだよ」
そんなハイジに呑まれまいと、田川も毅然と返す。
あくまで、王子の仮面を被ったまま。
「なら、決着つけようぜ──バスケで」
この機会を、
この瞬間を、
待っていたと言わんばかりに。
ハイジの声が一層、強まった。


