気を張っていなければ膝から崩れ落ちてしまいそうな、ハイジの苛烈な眼差しに貫かれる。
だからこそ、決断できた。
するしかなかった。
私の迷いを、断ち切ってくれた。
「アイツら、アンタとケイジくんのことを……バカにした。変なクスリ、やってるって……」
“ドラッグで頭イカれてんじゃね?”
“アハハ、言えてる!”
「太郎さんを、チンピラだ、って……。もっと酷いこと言って、侮辱した」
“世の中じゃ価値のない人間だよ”
「響兄ちゃんを……私のお兄ちゃんを、」
息が苦しい。
押し潰されそう。
頭が、心が、私を作るありとあらゆるものが、拒んでいる。
これ以上の言葉を。この先を。
口にしたくない。
でも、ここで止まっちゃダメだ。
負けちゃダメだ。
先に進まなきゃ。
どんなに辛くても──。
「落ちこぼれのクズだって、言った……!!」
全部吐き出した時、
私は泣いていた。
人目も気にせずに。
溢れてくる涙を、止めることができなかった。
爆発してしまったんだ。
必死に押さえ込んでいたものが、崩壊した瞬間だった。
何もかもそっちのけで、沸き上がる感情に任せて、ただボロボロに泣くだけ。
幼い子供みたいに泣きじゃくる私の頭に、
誰かの大きな手がぽんっと、置かれた。
あたたかくて、その温もりがじんわりと全身に行き渡る。
あまりにも心地良くて、自分が泣いていることも忘れそうになった。
恐る恐る顔を上げると──
「頑張ったな」
そこには、優しく笑うハイジがいた。
さっきまでの恐ろしい剣幕が嘘みたいに、穏やかな眼差しで。
別人かと思うほどの変わり様に、私はぽかんと見上げるだけだった。
そんな私をよそに、ハイジは次の瞬間にはもう引き締まった表情に戻り、冷静な目で前方を見据える。
そこに佇む、本城咲妃と田川大輔を。
「後は任せろ」
低く、力強く。
ハイジはそう告げた。


