気まぐれヒーロー2




気を張っていなければ膝から崩れ落ちてしまいそうな、ハイジの苛烈な眼差しに貫かれる。


だからこそ、決断できた。
するしかなかった。


私の迷いを、断ち切ってくれた。



「アイツら、アンタとケイジくんのことを……バカにした。変なクスリ、やってるって……」



“ドラッグで頭イカれてんじゃね?”
“アハハ、言えてる!”



「太郎さんを、チンピラだ、って……。もっと酷いこと言って、侮辱した」



“世の中じゃ価値のない人間だよ”




「響兄ちゃんを……私のお兄ちゃんを、」




息が苦しい。

押し潰されそう。


頭が、心が、私を作るありとあらゆるものが、拒んでいる。

これ以上の言葉を。この先を。

口にしたくない。


でも、ここで止まっちゃダメだ。

負けちゃダメだ。


先に進まなきゃ。



どんなに辛くても──。




「落ちこぼれのクズだって、言った……!!」




全部吐き出した時、

私は泣いていた。


人目も気にせずに。


溢れてくる涙を、止めることができなかった。


爆発してしまったんだ。

必死に押さえ込んでいたものが、崩壊した瞬間だった。


何もかもそっちのけで、沸き上がる感情に任せて、ただボロボロに泣くだけ。


幼い子供みたいに泣きじゃくる私の頭に、

誰かの大きな手がぽんっと、置かれた。


あたたかくて、その温もりがじんわりと全身に行き渡る。

あまりにも心地良くて、自分が泣いていることも忘れそうになった。


恐る恐る顔を上げると──




「頑張ったな」




そこには、優しく笑うハイジがいた。

さっきまでの恐ろしい剣幕が嘘みたいに、穏やかな眼差しで。


別人かと思うほどの変わり様に、私はぽかんと見上げるだけだった。


そんな私をよそに、ハイジは次の瞬間にはもう引き締まった表情に戻り、冷静な目で前方を見据える。


そこに佇む、本城咲妃と田川大輔を。




「後は任せろ」




低く、力強く。


ハイジはそう告げた。