「しょーもねえことはぎゃあぎゃあ騒ぐくせに、変なとこで隠したがるんだお前は。弱っちいくせによ」
呪いをかけるべく、緑の背中へぶつぶつと怨念を飛ばしていると。
ハイジがそんなことを言うから、憎たらしさも忘れて思わずヤツを見上げてしまった。
「言えよ」
ぼそっと一言、落とすんだ。
まりもっこりのくせに。カルピス教信者のくせに。
ハイジの、くせに。
わかってる。
言いたいこと、ちゃんとわかってる。
「ムリないわな。抱え込むタイプやもんな、ももちゃん。それに、まだそこまでの仲やないし」
まるで、私の心の内なんて全てお見通しだというように、ケイジくんが朗らかに笑う。
全部、わかってる。
だって、自分のことだもん。
抱え込むことも、一人で何とかできるならそうしたいのも。
そして、ケイジくんの言う通り。
まだ出会って間もない彼らに、私は完全には心を開けてない。
晒せないことがあるのも、ちゃんとわかってる。
嫌になる。こんな自分が。
“弱っちいくせに”
そうだ。
弱いよ、私。
弱いくせに、守りたいって思う。
大切な人たちを。
ちっぽけなのに、強がってる。
彼らの前じゃ、私の“強さ”なんて──たかが知れてるっていうのに。
「お前は、優等生くんのストーカーなんだな」
「……は?」
ハイジが田川をその目に映しながら、私に愛想の欠片もない低い声で言った。
一瞬、頭の中が空っぽになる。
聞き間違いだと思った。
だけど──
「嫉妬したってわけだ、優等生くんとその女に」
「なに、言ってんの……?」
ハイジは淡々と、言葉を畳みかけてくる。
愕然とする私を、振り返りもせず。
動転して、言葉が出てこない。
さっきまで、ハイジは真相を話していたはずなのに。
なんで、そんなこと言うの?
私が苦しめられてきた、嘘で塗り固められた“事実”を──。
「こっぴどくフラれたもんなぁ」
「やめてよ……」
「ヤケクソになって、強引にでも手に入れたくなったか」
「……やめてってば」
「無理やり奪おうなんて、真面目ぶってるわりにゃやることはダイタンじゃねーの。人は見かけによらねーってな。こえーこえー」
「やめてって言ってんでしょ!!!」
簡単だった。
抑えていたもの、溜め込んでいたもの
それらを解き放つことなんて。
気づいてなかったんだ。
自分の中が、こんなにもどろどろでいっぱいになってたこと。
無理してたこと。
止められなかった。
ハイジの襟元に掴みかかる両手を。


