「あれから、調べとったんよ」
ちんぷんかんぷんな金と銀コンビに、疲労のため息をついていると──
「ももちゃん、俺らはもう全部知っとる」
静かで、それなのに鋭く切り込む声が鼓膜を刺した。
その瞬間、思考が止まる。
ハイジと同じように私に背を向けたまま、“彼”は燃える赤と共に立つ。
ケイジくんって、キツネみたい。
人を惑わせるのに長けている。
おちゃらけたかと思えば、急に凍てついた目をする。
冗談みたいに言った言葉が、時々胸を突く。
化けてるのか、化かされてるのか。
掴もうとしても、指のあいだからこぼれ落ちていくような人。
そして、また──私に揺さぶりをかけてくる。
「調べた、って……?」
ビクビクしてる自分がいる。
彼に問いかける声だって、なんて細いんだろう。
何を知ってるの……?
沈黙したままのケイジくんの背中が、空気を重くしていく。
「また、俺らといることで絡まれとるだけやって。何の疑いもなく、そう思っとった。けど──ちゃうんやな」
その声音は私みたいに、揺れてなんかない。
落ち着いているけれど、強く、まっすぐに伝わってくる。
「俺らの“せい”やなくて、俺らの“ため”やったんやな」
ケイジくんはゆっくりと、振り返る。
目が合った瞬間、胸がぎゅっと締めつけられた。
その瞳が、泣きたくなるくらい優しかったから。
穏やかで、温かかったから。
やっぱりこの人は、底が知れない。
敵わない。
私が言わなくたって、全部見透かしてしまう。
「全員が、コイツらの言うことを信じてるわけやない。なかにはちゃんと、何が正しいか知ってるヤツもおる。ももちゃんの“声”を聞いとった人間もな。言い出せへんだけや、コイツらの妙な権力のせいで」
どうやって調べたのかなんて、もう愚問なのかもしれない。
ケイジくんは──いや、彼らは、常に恐ろしいほどの情報網を持ってる。
どこでどう繋がってるのかなんて、私にはわからないけど。
それでも、彼の言葉で気づいたことがいくつもあった。
ずっと、孤独だと思ってた。
みんなが本城咲妃と田川の言葉を鵜呑みにして、私の話なんて誰も聞いてくれないって。
小春だけが、私を信じてくれていた。
それでいい。
そう思ってたのに──
他にも、いたの……?
“あの時”、私の叫びを耳にした人がいたの……?


