気まぐれヒーロー2




「次こんなマネしてみろ。何すっかわかんねーぞ、俺は」



今度こそ、鳥肌が立った。

ゾクゾクと悪寒が走るのを、止められない。


ハイジの、もう一つの顔。


野生の獣の本能が、目の前の男に宿る。


今はハイジの目を、見たくない。

“恐怖”を感じたくない。


腹の底まで響くような、低くドスのきいた声だけで……もう十分だった。


そうだ。

ハイジはたとえ女の子相手でも、優しくなんてしない。

相手が誰であろうと、態度を変えたりしない。


自分の妨げになったり邪魔だと判断したら、躊躇なく牙を剥く。


わかってたはずなのに……

私は心のどこかで、そんなハイジを認めたくなくて、見ないフリをしていた。

怖いんだ。

おバカでフザけてるアイツの方が、ずっといい。

私の前ではそっちの顔で、いてほしい。


だって、そうじゃなきゃ──

私に向ける意地悪な顔も、イタズラな笑みも、全てが嘘になってしまいそうで。


ハイジがわからなくなる。


それが、怖い。


床に転がったゴミ箱は側面がぼこぼこにへこみ、見るも無惨な姿をしていた。


ハイジに凄まれた女の子は、唇を震わせ、歯がカチカチと鳴るほど怯えきっている。

目の焦点も合っていなくて、まるで現実から飛んでしまったみたいだった。


今のハイジは、何をしでかすかわからない。

越えちゃいけない線まで、越えてしまいそうで危うい。


ヤツがここまで怒りを露わにしたのは初めてで、目の前の光景に頭がついていかなかった。


もし今、田川や本城咲妃がハイジの癪に障るようなことを言ったら──

今度こそ、大惨事になる。


気が気じゃなかった。


そんな私の視界の端っこで、何かがごそごそと動いた。

自然と目がそれを追い、確かめてみると──

ケイジくんが、ボコボコになったゴミ箱を屈んで拾い上げていた。


……何してるんだろう。


不思議に思って、見守っていると。

ケイジくんは両手でそれを構え、ハイジに近づいていって……



「えいっ」



なんとも軽い掛け声と共に、ハイジの頭めがけて、そのゴミ箱を振り下ろした。