飛野さんはタイガーマスクの正面で立ち止まり、ニコニコしているヤツを見下ろすと、低い声で切り出した。
「お前、わざとだろ。知ってたんだろ。知ってて、俺にこれを渡したんだろ」
「え~?何のことかボクわかんない」
「バレバレなんだよ!!こんなグロテスクなツラしたヒーローがいるか!!いっつもいっつもお前は俺を騙しやがって!!」
「なんだかんだ言って似合ってるよ、ひーちゃ──」
「待て!!俺の名前を呼ぶなバカヤロウ!!!」
タイガーマスクとバルタン星人の言い争い……というよりも、バルタンが一方的にキレているだけなんだけど、それはまあ置いといて。
ヒーローっぽくないと疑いながらも、結局お面つけちゃった飛野さんもどうかと思う。
「……ほんっとバカみたい。みんなが怖がって、それでも憧れる白鷹先輩と黒羽先輩がどんなものかと思えば……こんな頭の悪い、中身も何もない、騒ぐだけしか能のない人間だったなんて」
かなりハチャメチャなヒーロー達が、勢ぞろいしたところで──
ボケラッシュの浮ついたムードをあっという間に、“彼女”は一蹴してしまう。
その、どこまでも冷たく、感情を捨てた容赦のない声が、ぬるい空気を切り裂く。
なんて強くて、凛としているんだろう。
彼女、本城咲妃の堂々とした佇まいは、気高ささえ感じさせた。
恐れを知らないその姿に、言い返すことすらも一瞬、忘れてしまいそうになった。
「咲妃、お前がそこまですることないよ。この人達は話が通じるような相手じゃないんだ、暴力でしか物事を解決できない人達なんだからさ。これ以上話してたってしょうがないし……もう行こう?俺はお前が何かされるんじゃないかって、心配だよ」
私と五人のヒーローズと真正面から対峙する本城咲妃に、柔らかい声でそう諭すのは──あの男。
卑怯な手を使い、仮面を被り、人を意のままに操る偽物の王子様。
田川、大輔。
今の今まで静観していたあの男は、機を狙ってたんだろう。
自分の彼女である本城咲妃を気づかうような素振りを見せ、彼女の肩に手を置いた。
虫酸が走るような笑みと共に。
「うん……ありがと。あたし、花鳥さんが自分の非をどうしても認めようとしないのが、許せなかったんだ」
何を……
「大輔のことも守りたくて。それなのに……白鷹先輩とその他の人達まで出してきて、脅されて。引き下がりたくなかったんだよね。大輔のためにも、自分のためにも」
何を、言ってるんだろう、この人……
「でも、もういいかな。みんなもわかってくれたと思うし。花鳥さんや白鷹先輩達が、どんな人なのか」
長い睫毛を伏せ、本城咲妃はその顔に悲しみを帯びたような表情を浮かべた。


