いや、でも!私の思い過ごしかもしれないじゃないか!!
そうとは限らないじゃんか!!
まさか“あの人”まで、なんちゃってヒーローズに加わったりするはずが……
「お、きたきた」
タイガがやけに弾んだ声で、廊下の端にある階段を見やった。
下の階から、バタバタと忙しなく足音が響いてくる。
一年の階へ駆け上がってきているのは、間違いない。
私は緊張で口の中がカラカラになりながら、生唾を飲み込み、やってくる人物をただ待った。
まさか……いや、まさか。
そんなはずない!
誠実で男気があって、硬派で、純情で、日本男児で、しかも料理人なあの人が──まさかそんなことは……!!
と、“あの人”を危ぶむ私の視線の先、ずっと向こうで。
階段をダッシュで昇ってきた一人の男子生徒が、勢いそのままに廊下へ飛び出してきた。
「オイ、これ本当にヒーローか!?どう見てもこれ、……これ、なあ、やられる側の顔だろこれは!!──あっ」
時が止まった。
なんてことだ。
なんてことなんだ。
当たっちまったよ……。
飛野さん──いや、ひーちゃんよ……。
そりゃヒーローじゃないよ。
そのお面は、ヒーローであるウルトラマンにやられちゃう怪獣代表格の、
バルタン星人じゃあねえか!!!
気味悪いほど静まり返った廊下。
ぽつんと離れた場所に立つ、飛野さん……いや、バルタン星人。
彼は顔につけたお面を指差したまま、彫像みたいに固まっていた。
不信感むき出しの無数の視線を、一身に浴びながら。
私も、声が出なかった。
──いや、出せなかった。
なんて声をかけたらいいのか、思いつかなかった。


