「やってねーんだろ、お前」
次にジローさんが発したその言葉が、自分へのものだってことも、すぐにわかった。
「はい」
だから私は、ためらうことなく、しっかりと頷いた。
私は間違ってない。
やっていないことは、やっていない。
何も、臆することなんてない。
きっとジローさんは、私と本城咲妃たちとの間に何があったかなんて、知らないはず。
それでも──
“やってねーんだろ”
私を信じてくれている。
どれだけ多くの人が『悪いのは私の方だ』と声を揃えても、ジローさんは迷いなく信じてくれていたんだ。
それだけで、泣きそうになる。
胸が熱くなる。
「じゃあ、いーじゃねえか。やってねーんだ。お前がそう言うんだから、間違いねえよ」
私、好きになったのがジローさんで良かった。
心の底から、そう思う。
ちょっと変で、犬が好きで、歩きながら寝ちゃうような人でも。
女の子が苦手で、おじいちゃんみたいで、ウルトラマンが大好きで、どこか宇宙人みたいでも。
大きい心と、絶対的な強さと、安心させてくれる優しさを持ってる。
「あたしが嘘ついてるって言いたいんですか?冗談じゃないわ、なんなら一年の学年主任に聞いて──」
「うるせえ」
尚も食い下がる本城咲妃の主張を、ジローさんはぶっきらぼうに遮った。
「俺は、コイツにこんな暗ェ顔させることが許せねえって言ってんだよ。笑ったらすげえ可愛いんだよ、コイツは。その笑顔を奪うような真似すんじゃねえよ!!」
いつもよりもずっと大きい声で、そう──叫んだんだ。
ジローさんが。
あの、ジローさんが。
私のために。
ダメだ。泣いちゃダメ。
ちゃんと、前を見てなきゃ。下じゃなく、前を。
なのに、どうして視界がぼやけるんだろう。
言葉に、できない。
胸がいっぱいで、抑えきれない。
抱え込んだ想いが、はち切れそうで……どうすればいい?
どうしたら、いいの?
ジローさんの力強い腕に包まれて、私は安らぎを感じていた。
彼は、私のヒーロー。
私だけの。
嬉しくてたまらない。
彼の存在は、こんなにも心強い。


