絶叫にも似た、女の子たちの悲鳴が、私のまわり全方向から絶え間なく響いていた。
“なんで”
“なんであの子が、あんな子が”
“どうして”
“ありえない、ウソでしょ”
“やだ……灰次くんと慧次くんだけじゃなくて、白鷹先輩まであんな子にどうして……?”
“私だって……”
“あたしも……”
何十人いるんだろう……いや、三桁いくかもしれない。
廊下の向こうまで、人の頭がひしめいているのが見える。
そんな大勢が口々に嘆くもんだから、空気がぐしゃぐしゃにかき乱されて、狭い空間に悲鳴が木霊した。
ほとんどが女子の甲高い叫びで、男子からはほんの少しだけ歓声が漏れている。
私はただ、自分の置かれている状況を理解できずにいた。
ジローさんに後ろから、ぎゅって抱きしめられてることくらいしか、わからなくて。
正面に立つ本城咲妃の眉間に刻まれる皺がどんどん深くなっていくのを、惚けた顔で眺めていた。
「……悪いのはそっちなのに、よくそんなこと言えますね。私は被害者なんですけど?ね、みんな。そうだよね?」
嫌悪感を露わにしていた表情を少し和らげ、気丈に振る舞いながらも優位に立とうとする彼女は、小さく笑って他の生徒たちに目配せをした。
今や、私は女の敵。
同じ女だからこそ、女の嫉妬というものがどれほど恐ろしく怨念じみたものか、いやというほど知っている。
私を射抜くような、女子たちの視線が突き刺さる。
喉の奥がひゅっと鳴った。
怖い。
「わ、私はペットなんです!」とか言えないし。
言ったとしても、変な意味に取られたら困る。
誰もが、私を“加害者”だと決めつけていた。
本城咲妃が“被害者”だと信じて疑わない。
その目が、すべてを語っている。
……でも。
ジローさんとタイガはどうして、現れたんだろう。
どうして、こんな演出を?
私が本城咲妃と田川たちと揉めたことを、知ってるの……?
何を、知ってるの?
「知らねーよ」
どひえええ!エスパー!?
今頭の中、読んだ!?
頭の上から降ってきた声に一瞬驚いたものの、ジローさんのそのセリフは本城咲妃に向けられたものだって、空気で察した。
低くて、お面越しだから少しくぐもってるのに──不思議と芯の通った声だった。


