「だから?」
……え?
視線を落とした私の頭上から降ってきたのは、あまりにも素っ気ない一言。
思わず顔を上げると、隣のニュータイプのウルトラマンはどっしりと構えたまま、もう一度言い放った。
「だから、なに」
そのセリフには、もれなく「何言っちゃってんのお前バカじゃねーの?」がセットでついてきちゃうくらいの圧があった。
私は知ってる。
ジローさんの『だから?』の破壊力を。
こっちがいくら必死で弁論並べても、言い返そうとしても、ジローさんの『だから?』の前では無意味。無力。完全敗北。
イラッとくるどころか、脱力して戦意を失う。
二の句を継がせない迫力と、どこから湧くのかも分からないほどの自信。
それはキングだから成せる業。
あの美麗フェイスとセットで繰り出された日には、立ち直るのに半年はかかる──と風の噂で聞いた。ウソ。今、私が決めた。
とにかく、次の言葉を飲み込むしかないのは必至。
それは本城咲妃といえど例外じゃないらしく、彼女は眉をひそめ、より一層険しい目でジローさんを睨みつけていた。
ウルトラマンになっちゃってる今、その効果は半減してるはずなのにすごい効き目だ。
「どーでもいいし。俺には関係ねーし」
面倒くさそうに吐き捨てるジローさんに、気後れしてしまうのは仕方がないこと。
“関係ねーし”
ジローさんにとっては私が誰を好きであろうと、取るに足らないことだと、思い知らされるんだ。
たったそれだけで、一気に弱くなる。
さっきまで負けない心を持っていたのに。
強くなれた気でいたのに……。
ジローさんのことになると、途端に私は脆くなってしまう。
「あんた、言ったな。俺も、あんたとやってることは変わんねーって」
私の横で、ジローさんは淡々とした声で本城咲妃に言葉を投げる。
冷静で、揺るがない声。
ついさっきまで、ウルトラマンごっこではしゃいでいた人とは思えない。
「別に俺は自分のやってきたことを正当化するつもりもねーし、懺悔するつもりもねえ。汚えことだらけだ、あんたよりもな。正義のヒーロー?んなモン気取ったところで、俺の救いてえ笑顔は手に入らねーよ」
私、見惚れてたんだ。
無意識に、自然に、見惚れてた。
ジローさんに。
なぜだか、わからない。
胸が騒ぐのは、やっぱり彼が、私の中の大きな部分を占めてるから。
ドキドキが止まないのは、どうしようもなく彼がカッコいいから。
そして──
突然、体を引き寄せられた。
足がもつれて倒れかけたけど、倒れなかった。
私の全身を、やわらかな温もりが包みこむ。
背中に伝わる、熱い体温。
ジローさんに後ろから抱き締められ、私はその腕の中にすっぽりと納まっていた。
「俺は、コイツのヒーローなんだよ」


