気まぐれヒーロー2




「だから?」



……え?


視線を落とした私の頭上から降ってきたのは、あまりにも素っ気ない一言。

思わず顔を上げると、隣のニュータイプのウルトラマンはどっしりと構えたまま、もう一度言い放った。



「だから、なに」



そのセリフには、もれなく「何言っちゃってんのお前バカじゃねーの?」がセットでついてきちゃうくらいの圧があった。

私は知ってる。
ジローさんの『だから?』の破壊力を。


こっちがいくら必死で弁論並べても、言い返そうとしても、ジローさんの『だから?』の前では無意味。無力。完全敗北。


イラッとくるどころか、脱力して戦意を失う。


二の句を継がせない迫力と、どこから湧くのかも分からないほどの自信。

それはキングだから成せる(わざ)

あの美麗フェイスとセットで繰り出された日には、立ち直るのに半年はかかる──と風の噂で聞いた。ウソ。今、私が決めた。


とにかく、次の言葉を飲み込むしかないのは必至。


それは本城咲妃といえど例外じゃないらしく、彼女は眉をひそめ、より一層険しい目でジローさんを睨みつけていた。


ウルトラマンになっちゃってる今、その効果は半減してるはずなのにすごい効き目だ。



「どーでもいいし。俺には関係ねーし」



面倒くさそうに吐き捨てるジローさんに、気後れしてしまうのは仕方がないこと。



“関係ねーし”


ジローさんにとっては私が誰を好きであろうと、取るに足らないことだと、思い知らされるんだ。

たったそれだけで、一気に弱くなる。


さっきまで負けない心を持っていたのに。
強くなれた気でいたのに……。

ジローさんのことになると、途端に私は脆くなってしまう。



「あんた、言ったな。俺も、あんたとやってることは変わんねーって」



私の横で、ジローさんは淡々とした声で本城咲妃に言葉を投げる。

冷静で、揺るがない声。


ついさっきまで、ウルトラマンごっこではしゃいでいた人とは思えない。



「別に俺は自分のやってきたことを正当化するつもりもねーし、懺悔するつもりもねえ。汚えことだらけだ、あんたよりもな。正義のヒーロー?んなモン気取ったところで、俺の救いてえ笑顔は手に入らねーよ」



私、見惚れてたんだ。

無意識に、自然に、見惚れてた。


ジローさんに。

なぜだか、わからない。


胸が騒ぐのは、やっぱり彼が、私の中の大きな部分を占めてるから。

ドキドキが止まないのは、どうしようもなく彼がカッコいいから。


そして──

突然、体を引き寄せられた。

足がもつれて倒れかけたけど、倒れなかった。


私の全身を、やわらかな温もりが包みこむ。


背中に伝わる、熱い体温。


ジローさんに後ろから抱き締められ、私はその腕の中にすっぽりと納まっていた。




「俺は、コイツのヒーローなんだよ」