気まぐれヒーロー2




“咲妃、ヤバイって……白鷹先輩ってほら、お兄さんがさ……”
“そうだよ、この人たちまで敵にまわしたら、あたしたちの方がどんな目に遭わされるか……”



そして、本城咲妃を小声で引き止めたのは、彼女の取り巻きたち。

さっきまでの勢いはどこへ消えたのか、今はその顔が怯えに染まっていた。


彼女らもまた、恐れている。


ジローさんたちを。

そして、その背後に潜む“危険”を。

白鷹次郎の兄、白鷹太郎がどんな人間かを知っている彼女たちだからこそ。



「結局あんたたちも、白鷹次郎側の人間ってわけ?」



ゆらりと流れるように向けられた本城咲妃の視線に、取り巻きたちの表情が一斉に凍りつく。

彼女の、あまりにも冷酷で狂気じみた目に。

けれど、本城咲妃はすぐに視線を外し、



「まあいいわ。黙っててよ。邪魔だから」



そう言って、私たちを鋭く睨みつけ、唇の端を吊り上げた。




「“白鷹先輩”、その子……あたしの彼氏を奪おうとしたんですよ?」



舐めるような視線が、私の隣に立つジローさんを射抜く。



「知ってました?花鳥さん、あたしの彼氏のことが好きで、告白したって」



心臓に太い釘を打ち込まれたような──強烈な痛みが走った。

本城咲妃の勝ち誇った笑みが、私を崖の底へ突き落とす。



「何度も言ってるじゃん、私はあんたから田川を盗ろうなんて思ってもないし、してない!」



だけど……

どんなに憎くたって、“好き”だったのは、事実。


あの時、アイツに告白したのも、嘘じゃない。

それは、曲げようのない“過去”だ。


ジローさんにだけは……知られたくなかった。


私のこと、どう思うかな……。


本城咲妃の言うこと、信じちゃうのかな。


私……嫌われちゃうのかな。


田川を好きだったこと、告白したことも、否定できない。


私は今、ジローさんだけなのに。


ジローさんのことが、こんなにも大好きなのに。