“咲妃、ヤバイって……白鷹先輩ってほら、お兄さんがさ……”
“そうだよ、この人たちまで敵にまわしたら、あたしたちの方がどんな目に遭わされるか……”
そして、本城咲妃を小声で引き止めたのは、彼女の取り巻きたち。
さっきまでの勢いはどこへ消えたのか、今はその顔が怯えに染まっていた。
彼女らもまた、恐れている。
ジローさんたちを。
そして、その背後に潜む“危険”を。
白鷹次郎の兄、白鷹太郎がどんな人間かを知っている彼女たちだからこそ。
「結局あんたたちも、白鷹次郎側の人間ってわけ?」
ゆらりと流れるように向けられた本城咲妃の視線に、取り巻きたちの表情が一斉に凍りつく。
彼女の、あまりにも冷酷で狂気じみた目に。
けれど、本城咲妃はすぐに視線を外し、
「まあいいわ。黙っててよ。邪魔だから」
そう言って、私たちを鋭く睨みつけ、唇の端を吊り上げた。
「“白鷹先輩”、その子……あたしの彼氏を奪おうとしたんですよ?」
舐めるような視線が、私の隣に立つジローさんを射抜く。
「知ってました?花鳥さん、あたしの彼氏のことが好きで、告白したって」
心臓に太い釘を打ち込まれたような──強烈な痛みが走った。
本城咲妃の勝ち誇った笑みが、私を崖の底へ突き落とす。
「何度も言ってるじゃん、私はあんたから田川を盗ろうなんて思ってもないし、してない!」
だけど……
どんなに憎くたって、“好き”だったのは、事実。
あの時、アイツに告白したのも、嘘じゃない。
それは、曲げようのない“過去”だ。
ジローさんにだけは……知られたくなかった。
私のこと、どう思うかな……。
本城咲妃の言うこと、信じちゃうのかな。
私……嫌われちゃうのかな。
田川を好きだったこと、告白したことも、否定できない。
私は今、ジローさんだけなのに。
ジローさんのことが、こんなにも大好きなのに。


