気まぐれヒーロー2




「調子乗んなよ」



私を見下ろす目も、掠れた声も冷たくて。

さっきまでのふざけた態度は脱ぎ捨てたハイジが、私を恐怖という鎖で縛った。


「……もう、騙されないから」


声の震えを悟られないよう平気なフリして、私はハイジから視線を逸らさず返した。


負けたくなかった。

いつもいつも力ずくでどうにかしようとする、この男に。



「今度は途中でやめたりしねえよ」



不穏な笑みを浮かべ、ハイジが私の心を見透かすように言う。

その武骨な手が、制服越しに私の体を探るように這った。


「い、や……」


途端に浮ついていた“恐怖”は現実に形となって、私に襲いかかってきた。

ハイジの肩を押し返そうとも、足をばたつかせてみても。

びくともしない。

私の意思なんか関係なく、行為は進められていく。


私は、タブーを犯した?

ケイジくんの、こと?

ハイジを豹変させたのは……双子の彼なの?


ハイジがケイジくんに抱く思いや、二人の間にある絡まる糸は、私には……見えない。



「やめて、ハイジ……!」



ハイジが自分を見失ってることも、こんなのは一時の激情にしか過ぎないことも。

わかってるから。



首筋を這う、唇。

太股をなぞる、指。

ハイジの体の、重み。

抗えない、力。


“あの時”とは違う、獣じみた衝動に……身動き取れない。


それでもカラダは熱くなっていって、

それがハイジの体温なのか、自分自身の熱なのか。


もう区別すらつかなくなった頃──



突然、教室の戸が開いた。


その音に反応したのか、ハイジの肩が僅かに揺れて、動きが止まる。

ハイジが振り返った先へ、私もヤツの肩越しに視線を向けた。



どうして。

どうして、“今”なの……?


気が遠くなるような感覚に、軽く目眩すら覚えて。


そこに立つ人から、目を離せなかった。



「ジローさん……」



無意識に、その人の名を──私は紡いでいた。