「は~ダメだ……もうダメだ……」
「ジ、ジローさん!?」
魂ごと抜け出しそうな、長い長いため息。
そんな重いため息と一緒にしゅるしゅるとしぼんでいく、ウルトラマンジロー。
しきりに「は~……」「はあ……」「はとぽっぽ……」と、憂鬱なため息ばかり漏らすジローさんはしゃがみ込み、背中を丸めていた。
「ワリィな、タマ……地球はもう終わりだ手遅れだ、俺の手じゃ救えねーんだ……悪の根源はトラだ、トラが悪ィんだ。恨むならトラを恨めよ。だって3分が……は~……」
どんよりオーラを背負ったウルトラマンジローは、ちょっと笑っちゃいそうになるくらい落ち込んでいた。
よっぽど3分にこだわりがあったらしく、さっきまでの生き生きとした姿は見る影もない。
「だ、大丈夫ですよ、ジローさん!!地球は別に危機じゃありませんから!!」
「でもよォ、いつ何が起こるかわかんねえじゃねーか。怪獣が攻めてきても俺……スペシウム光線出せねーんだぞ……」
やだ、どうしよう!なんか可笑しい……!!
「いや、そんな、スペシウムこうせ──ぷふっ」
ダメよ、笑っちゃ!!
だってジローさんは……本気なんだから!!
ほ、本気で自分をウルトラマンだと思い込んでるんだから……!!
萎れたウルトラマンジローを励ましながらも、私は笑いをこらえるのに必死だった。
「ジローさん、ウルトラマンジローは“進化したウルトラマン”なんですよ。だから3分経っても、とっても強いんですよ!」
はー、おなか痛い。腹筋が痙攣してきた。
「……ガチ?俺、3分以上でも強ェの?」
「はい!」
「そうか、俺ニュータイプなんだな」
「そーですよ!」
「進化したんだ、新種なんだ。ウルトラマンタローより強ェんだ!」
いかんいかん!!
気を緩めるな、腹に力を入れるんだ!
今気を抜いたら、確実に笑い転げる自信がある!!
せっかくジローさんがウルトラマンとして自信を取り戻したんだ、ここで吹き出したら全部パーだ!!
ぷるぷるする腹筋とひくひくする顔の筋肉と戦う私をよそに、ジローさんはにょきっと立ち上がった。
そして下腹に究極に力を込めている私を見下ろし、一息置いて、自信たっぷりに言い放った。
「俺って最強」
……うわあ!
もう完全に自分に酔ってるよ!!
これからウルトラマンとして人生歩んでいく気満々だよ!!
「ぶふぁっ」
ついに私の腹筋は、崩壊した。


