いいんだろうか。
“あの”白鷹先輩が、大衆の面前でここまでウルトラマンに入り込みすぎてていいんだろうか。
「 あ、あたし寝不足で、目がおかしいのかも……」
「私も、バイトのしすぎかな……」
「あのウルトラマン、白鷹先輩じゃないんだよ!!ほ、ほら、銀髪ってだけじゃわかんないじゃん」
女子のなかには、ウルトラマンジローを白鷹次郎だと信じたくなくて、現実逃避を始める子までいた。
肝心のジローさんはというと、「スペシウム光線だ、ウルトラチョップだ」と煩かった。
ウルトラマンになってから、やたら生き生きしてるのはどうしてなんだろう。
「フザけてんじゃないわよ、あんた達、さっきからどういうつもりなのよ!!」
突然張り上げられた、甲高い声。
途端に、ピタリと音が止んだ。
賑やかになりつつあった廊下が、再び無音の空間へと戻る。
一人だけあからさまに敵意を放ち、空気を濁らせていくのは、あの女。
私が立ち向かい、戦わなきゃいけない相手──本城咲妃。
「バカじゃないの!?そんな格好して……あんた達みたいな人種って、本当にくだらないことしか思いつかないのね」
ウルトラマンとタイガーマスクを刺すような目つきで見据える彼女は、いつになく感情的に見えた。
その裏に、何か事情を隠しているような……本城咲妃らしくない激昂ぶりだった。
でも、それなりの理由があるのだとしても。
彼らをけなす言葉に、黙っていられなかった。
「あんたね──」
「まあまあ、待て」
食ってかかろうとした私の前に、スッと差し出された腕。
行く手を阻むその腕の主は、タイガーマスクだった。
「威勢のイイねーちゃんだな。せっかくキレーな顔してんだ、もうちっとシオらしくなれよ。女は従順な方が愛されんぜ」


