「誰だ、お前をこんなにしたのは」
ウルトラマンもどきのジローさんは、へたり込んでいた私の手をそっと握り、立たせてくれた。
「ジローさん、あの……」
「ただのジローじゃねえ、ウルトラマンジローだ」
「え、あ、……はい」
ドラマチックな登場に、絶妙なタイミングで助けに来てくれた彼は惚れぼれするほどカッコいい、はずなのに。
見上げたその顔は、まさかの、ウルトラマン……。
言うことも、さっきのタイガーマスク気取りのタイガと似たようなもので、断固として自分が『白鷹次郎』だとは認めてくれない。
「コレ選んだのは、コイツだからな。これがいいこれがいいって、うるせーんだよ。『ウルトラマンタローがいんなら、ウルトラマンジローがいたっていいじゃねーか』とかヘリクツ言いやがってよー」
ウルトラマンジローと手を取り合っていると、極悪タイガーマスクが、ジローさんがなぜウルトラマンになったのかを説明してくれた。
選ぶって、他に何があったんだろう。
っていうか、なんでそんな凝った小道具をわざわざ用意したの?
やっぱりこの人たちの思考回路は、理解を超えてる。
そんなことを考えていたら、ウルトラマンジローが急に顔を近づけてきた。
ぬぼーっと、機械的な仮面が迫ってくる。
そりゃそうだ、ウルトラマンなんだから。
なんて冷静にツッコんでいる間に、その顔はもう目と鼻の先まで来ていた。
「な、なな、何を……」
反射的に肩に力が入った、その瞬間——
「ぶっ」
私とウルトラマンジローの顔が見事に、ごっつんこした。
「…………」
「…………」
何とも言えない、ツルペタな感触。
血の通った人肌のような温もりなんて、微塵もない。
お面と顔をくっつけたまま、停止する二人。
周囲も静まり返っていた。
──何なんだろう、これは。
ウルトラマンジローは、何がしたいんだろう。
妙な気分でいると、ぼそっと、彼が呟いた。
「……舐めれねえんだけど」
ああ
そうなのね……。
こんな時でも、ジローさん。
あなたは、私を舐めようとしてたのね。
ウルトラマンジローは名残惜しそうに顔を離した。
表情は見えないけれど、彼を囲む空気が妙にしょんぼりしている。
ジローさんはお面に邪魔され、私を舐めることができずにとっても切なそうだった。
私はウルトラマンのおかげで、こんなに大勢の人の前で舐められずに済んで、ホッとした。


