目を見開いたまま、硬直する私の顔に落ちてくるのは……
細かく刻まれた焼きそばの麺、肉、ニンジン、キャベツの欠片。
それらが髪や肌に張りつく感触が、神経を逆撫でする。
男は、中身の抜けたパンを私の顔に投げつけてきた。
床に転がるその抜け殻を、無心で見つめていた。
「あはは、サイコー!!」
「きったねーなー、ちゃんと味わって食えよ?」
「残したらもったいないしねー」
「その格好、似合ってるよ。ブスな顔には」
片手を足で踏まれたまま、髪にも顔にも脂ぎった焼きそばがこびりついている。
ショックで、何も考えられず、ただ固まるしかなかった。
それを大口開けてバカみたいに笑うヤツらの声が、頭の中に反響していた。
わからない。
何が起きたのか、わからない。
どうして、こんなことになってるの?
やっぱり……私一人じゃ、ダメなの?
大勢の前じゃ、無力でしかないの?
悔しい。
悔しい……!!
「あんたの兄、“花鳥響”だっけ?随分と有名らしいじゃん、不良の間じゃ。血は争えないってわけだ?」
本城咲妃の嘲笑まじりの声に、虫酸が走る。
全身の血が煮えたぎるのがわかった。
口の中に、鉄のような血の味がじわじわと広がる。
強く噛みすぎて、唇を切っていたらしい。
「だから……なに?」
声が、震える。
あまりにも、頭にきすぎて。
怒りを通り越して、自分を見失いそうになるほどだった。
──お兄ちゃんの名を、口にしないで。
あんたみたいな人間が……
軽々しく、お兄ちゃんを語らないで!!
「何を言われようと構わない。私は……“花鳥響”の妹だってことを、誇りに思ってんだよ!!!」
やられっぱなしで、終わらせたりしない。
私はまだ、戦える。
だから、噛みついてやった。
本城咲妃の足に。
私の手を踏みつけている、その細い足首に、思いきり──噛みついた。
ホント……私、犬みたい。
「きゃ……!」
予想もしていなかった私の行動に、本城咲妃が小さな悲鳴を上げ、後ずさる。
「てめえ!!」
男が拳を振り上げるのと──“それ”は、ほぼ同時だった。
「意外やな。可愛げのない、プライドの塊みたいな女かと思ったら……ちゃ~んと女の子らしい声、出せるんやん?」
聞き慣れた関西弁。
その声に、恐る恐る顔を上げる。
鮮やかな赤い髪が、真っ先に目に入った。


