「私が守るんだよ。あんたから、私が。一歩だって退かない。負けない。何度でも、私は立ち上がってみせるから」
本城咲妃から目を逸らさずに、私はそう決意を示した。
いつの間にか一年生の階の廊下には、他の教室から出てきた野次馬が群れを成していて、私たちの対峙を面白半分に見ている生徒の人だかりができていた。
昼休みで廊下や教室が騒がしいのはいつものことだけど、今は明らかに様子が違う。
異様なざわめきが広がっていて、冷やかすような視線に辟易していた。
でもこれ以上言うことも、ここに留まる理由もない。
憎しみそのもののような、本城咲妃たちの視線を無視して、私は床に散らばったパンを拾おうと屈んだ。
危ない空気は、少しずつ強まっていたはずだった。
知りながらも、私はただ小春とケイジくんが待つ教室へ戻りたかっただけだった。
だから、知らないふりをしていた。
一個一個パンを拾い、最後の一つ、焼きそばパンへと手を伸ばした──
その時。
「っ、つ……!」
激痛が、手の甲に走る。
パンに触れようとした私の手に、突然強い衝撃が落ちた。
床へ押さえつけているのは、本城咲妃の足だった。
勢いよく踏みつけられ、思わず顔をしかめた。
「生意気なんだよ、あたしに逆らおうなんて。あんたみたいな虫ケラ以下の女にあたしがバカにされるなんて、マジで気分悪い。あんたなんか、黙って頭下げてりゃいいんだよ!!」
廊下に這いつくばるしかない私へ、本城咲妃の罵声がナイフのように私に突き刺さる。
彼女が私の手を踏みにじるたびに、手の甲は強く押され、皮膚が引き伸ばされるようで、叫びたくなるほど痛かった。
どよめきと、悪魔のような笑い声とが混ざり合い……耳の中が混乱に陥る。
唇を噛みしめ、私はぐっと顔を上げて睨み返した。
そこにあったのは、まるで汚物を見下ろすかのような本城咲妃の瞳。
背筋が凍りつく目。
そして、その脇には取り巻きの顔ぶれのほかに、あの男たちの姿もあった。
あの時、裏庭でタバコの火で私と小春を脅そうとした田川の友人たち。
さらに少し後ろには、愉快そうに見物する田川大輔本人の姿も見えた。
自分は関与せず、優等生を装って。
「パン食いたいんだろ?俺が食わしてやるよ」
男の一人が薄ら笑いを浮かべ、落ちている焼きそばパンを拾い上げた。
封を破る手つきは、いやに冷たくて。
次の瞬間──
パンは、私の頭上で逆さまにされた。


