昨日までの私なら、怯んでたかもしれない。
逃げ腰になってたかもしれない。
でも……今は、そうじゃないから。
ハイジやケイジくんの後ろ盾があるからとか、そんなんじゃないんだ。
そんなの、思ったこともなかった。
彼らの強さを、この目で見た。
瞳の奥に焼き付けた。
心の奥に刻み込んだ。
勇気をもらった。
踏ん張る力を、強固な意志を。
何事にも真っ向からぶつかっていく、不屈の精神を──
もらったんだ。
憧れた。
私も、そう在りたいと。
戦わなきゃ。
私は私の戦いを、しなきゃ。
「可哀相な人」
げらげら笑う取り巻きたちと、不敵な笑みを貼り付けた本城咲妃に向かって、私はそう言葉を投げた。
すると、彼女らの笑い声はぱらぱらと止み、一斉に私へ視線が向いた。
「あ?」
不快感をあからさまに滲ませたその目つきに、怯みそうになるけれど──私は落ち着いていた。
心は、とても静かだった。
「そんな風にしか笑えないなんて。他人の不幸を笑うことしかできないなんて。そんな風にしか幸せを見つけられないなんて……可哀相」
幸せの形は人それぞれで、何が幸せかを他人が決めつける権利はない。
だとしても、人を苦しめて得る幸せなんて、私は欲しくない。
そんなのが幸せだとは、思えない。
「はあ~?お前さー、なんなの?カワイソウとか、お前に言われる筋合いないって」
「ホント、あんたなんかに同情されたくないんだけど」
「カワイソウなのは、お前の方じゃねーの?咲妃の彼氏に手ェ出そうとしてさぁ、お前だって人を不幸にしようとしてたんじゃん」
話にならない。
何を言ったところで聞く耳を持たないのなら、もう言葉は尽きた。
でも一つだけ、どうしても言っておかなきゃいけないことがある。
譲れないものがあるんだ。
私は本城咲妃を真っ直ぐ見据え、はっきり告げた。
「もう二度と、私の友達を傷つけるような真似しないで。今度そんな事したら、絶対に許さないから。あんたを、絶対に許さないから!!」
小春や朝美を、巻き込ませない。
酷い目に遭わせたりしない。
あの笑顔を失わせるようなこと、悲しませるようなこと、絶対にさせない。
「へえ、『許さない』ってどうするわけ?何ができるの?あんたなんかに。それとも……灰次と慧次が脅してくるってこと?」
いやらしく口角を上げる本城咲妃。
女王様のような風格を漂わせる余裕の態度に、私が思わず感嘆しそうになる瞬間があったとしても──。
私はここで尻尾を巻いて、逃げたりはしない。


