一挙に沸き上がる、さまざまな感情。
しなやかで美しい豹を思わせる彼女の強気な瞳に、私が閉じ込められている。
動悸が速まり、私の内側で濁った激情が暴れ出す──
それは、恨みであり、憎しみであり、怒りでもあった。
今、どんなささいな刺激だって与えられれば、それらは簡単に解き放たれて、私を覆いつくすだろう。
たぶん、今の私の顔は……醜い。
本城咲妃に向ける視線は、凶暴で獰猛だ。
人を傷つけそうな危うさに満ちている。
自分の中に、こんな感情が芽生えていることに、ぞっとする。
「昨日……翔桜の男たちを仕向けたのは、あんた?」
興奮を抑えて、なるべく平静を装い、私は本城咲妃に問いかけた。
「だったら、何なの?警察に通報する?証拠なんて、何もないけど」
鼻で小さく笑い、口元を軽く上げる本城咲妃の目付きは──明らかに挑発的で、私の神経を逆撫でしている。
朝美から事件の真相は聞いたけれど、当人の口から真実を聞かなければ意味がない。
それが大事だと、思ったから。
「朝美も……最初から巻き込むつもりだったの?」
目を逸らさない。
心だって屈しない。
誘いに乗らない。
自分をしっかり持って、胸を張っていなければ。
「ああ……アイツ。使えないよね、頭悪いし。ほんと、役立たずもいいとこ」
本城咲妃が目元を歪め、クスクスと不快な笑いを漏らした瞬間、溜めに溜めた“思い”が弾けた。
手を伸ばせば届く距離のこの女を、思い切り引っぱたきたい。ぶったたきたい。張り倒してやりたい。
憎くて憎くて、腹のうちが煮えくり返る。
どうにかしてやりたい衝動に駆られるけれど、私は堪えるしかなかった。
ここで暴力に走ってしまえば、前と同じ──二の舞になってしまう。
「笑うな!!」
爪が食い込んで皮膚を破りそうなくらいに、握り締めた拳。
抑えきれない怒りに、身体が震える。
人を見下すようなその女を、私は鋭く睨みつけた。
「自分は手を汚さずに、卑怯な手段使っておいて……人の気持ち踏みにじって、平然と笑ってんじゃねえよ!!」
負けないと決めた。
後ろに引かないと、誓った。


