気まぐれヒーロー2




「な?あの二人、めっちゃ仲ええやろ~?」

「ほんとだね」



ケイジくんと、クスクス笑ってる小春を眺めながら席についた。

彼はゲイ……ではないと思うけど、少し気掛かりではあった。

女の子の扱いに慣れていて、優しくて、人の気持ちにも敏感で頼りがいがある。

素敵だし、小春が好きになるのもわかる。


だけど、そんな彼を他の女の子が放っておくわけなくて、実際何人もの子と遊んでるのも知ってる。

心の底から、小春の恋を応援できない自分がいた。

小春はすごく奥手で、男の子の話なんてしたことがない。

そんな彼女が、初めて見つけた恋。

その気持ちを大切にして欲しいと思う一方で、傷つく姿なんて見たくなくて、複雑だった。


そのうち担任が入ってきて、朝のHRが始まる。

一時間目、二時間目と過ぎていくなか、教室の中央あたり──ひとつだけ空いた席に、つい目がいった。


朝美……どうしたんだろ。


その席は朝美の席で、まだ来ていない。

昨日のこともあって気になり、メッセージを送ってみた。


『寝坊でーす☆お昼から行くね~☆』


なんて、返信が来た。
心の中で小さく舌打ちした。



昼休み。
今日はお母さんのお弁当お休みデーだから、購買でパンを買うことにした。

小春は着いて来ようとしてくれたけど、ケイジくんと教室で待っててほしいとお願いした。

優しさは嬉しいけど、そこまでしてもらうほど弱ってはないし、普段通りでいたかった。


どれだけ悪意の渦に巻き込まれようとも、怖くなんてない。

私は、大丈夫。


「俺も昼メシないし、行こかな」

「私、ケイジくんの分も買ってくるよ」


気遣ってくれてるのは、ケイジくんも同じ。

でも、何もかも守ってもらうつもりもないんだ。


できることなら、対等でいたい。

一緒に、笑いたい。並んでいたいんだ。


強くて、折れない意志を持つ彼らに、少しでも近づきたくて。


昼の購買は相変わらず人だらけで、群がる人混みをかき分けながらパンを買った。
息苦しさに耐えきれず、すぐその場を離れる。


一年の階に戻り、教室へ向かって廊下を歩いていると──他の教室から出てきた誰かと、肩がぶつかった。


「あっ……」


その拍子に、手提げの袋が落ちて中のパンが廊下に転がる。



「ごめんなさ──」



慌てて顔を上げて、言葉を詰まらせた。

謝って、パンを拾って帰る。


ただそれだけの、はずだったのに。


喉の奥で、言葉が止まる。

いや……失った、と言った方が正しいかもしれない。




「あんた、無事だったんだ」




目を見開いて固まる私を、鋭く光る瞳が忌々しげに射抜く。

まるで汚れたものでも見るかのような、目つき。



ぶつかった相手は──


本城咲妃だった。