「な?あの二人、めっちゃ仲ええやろ~?」
「ほんとだね」
ケイジくんと、クスクス笑ってる小春を眺めながら席についた。
彼はゲイ……ではないと思うけど、少し気掛かりではあった。
女の子の扱いに慣れていて、優しくて、人の気持ちにも敏感で頼りがいがある。
素敵だし、小春が好きになるのもわかる。
だけど、そんな彼を他の女の子が放っておくわけなくて、実際何人もの子と遊んでるのも知ってる。
心の底から、小春の恋を応援できない自分がいた。
小春はすごく奥手で、男の子の話なんてしたことがない。
そんな彼女が、初めて見つけた恋。
その気持ちを大切にして欲しいと思う一方で、傷つく姿なんて見たくなくて、複雑だった。
そのうち担任が入ってきて、朝のHRが始まる。
一時間目、二時間目と過ぎていくなか、教室の中央あたり──ひとつだけ空いた席に、つい目がいった。
朝美……どうしたんだろ。
その席は朝美の席で、まだ来ていない。
昨日のこともあって気になり、メッセージを送ってみた。
『寝坊でーす☆お昼から行くね~☆』
なんて、返信が来た。
心の中で小さく舌打ちした。
昼休み。
今日はお母さんのお弁当お休みデーだから、購買でパンを買うことにした。
小春は着いて来ようとしてくれたけど、ケイジくんと教室で待っててほしいとお願いした。
優しさは嬉しいけど、そこまでしてもらうほど弱ってはないし、普段通りでいたかった。
どれだけ悪意の渦に巻き込まれようとも、怖くなんてない。
私は、大丈夫。
「俺も昼メシないし、行こかな」
「私、ケイジくんの分も買ってくるよ」
気遣ってくれてるのは、ケイジくんも同じ。
でも、何もかも守ってもらうつもりもないんだ。
できることなら、対等でいたい。
一緒に、笑いたい。並んでいたいんだ。
強くて、折れない意志を持つ彼らに、少しでも近づきたくて。
昼の購買は相変わらず人だらけで、群がる人混みをかき分けながらパンを買った。
息苦しさに耐えきれず、すぐその場を離れる。
一年の階に戻り、教室へ向かって廊下を歩いていると──他の教室から出てきた誰かと、肩がぶつかった。
「あっ……」
その拍子に、手提げの袋が落ちて中のパンが廊下に転がる。
「ごめんなさ──」
慌てて顔を上げて、言葉を詰まらせた。
謝って、パンを拾って帰る。
ただそれだけの、はずだったのに。
喉の奥で、言葉が止まる。
いや……失った、と言った方が正しいかもしれない。
「あんた、無事だったんだ」
目を見開いて固まる私を、鋭く光る瞳が忌々しげに射抜く。
まるで汚れたものでも見るかのような、目つき。
ぶつかった相手は──
本城咲妃だった。


