気まぐれヒーロー2




まさか……


ハイジ……


「一目惚れしちゃったの?」


ほんの軽い気持ちで聞いただけなのに。


「ねーよ」


おっそろしいほど冷めた目と声で、返された。

心臓が縮み上がった。


じゃあ何のために聞いたのよ、と不満げにハイジを見上げると──


「お前のダチ、惚れてんだろ。ケイジに」


少し声を落として言うハイジに、ぎょっとした。


「アイツは……ケイジはやめといた方がいいぜ」


さらに続いたその言葉が、私を惑わせた。


コイツ、意外と鋭い。

小春が、ケイジくんに恋してることに気づくなんて……。
ハイジのくせに。


でも、それよりも重大なのはコイツの深刻な一言。


「それ、どういうこと?」


ハイジの目は冗談じゃなく、本気で小春とケイジくんを見据えていた。

それにハイジはケイジくんと双子で、私なんかよりずっと彼を理解しているはずだから、余計に気になった。



「アイツさ……」



慎重に言葉を選ぶように、ハイジの視線が私に向いた。

ごくりと唾を飲み込み、その続きを待つ。

そして──



「ゲイなんだよ」



至極真面目な顔で、ハイジは言い放った。


………………

…………

……



「ウソでしょ」

「残念だな。俺はウソはつかねえ男だ」

「……」



やっぱウソじゃん。

一瞬でもドキッとした私がバカだった。


なんかアホらしくなって、自分の席に戻ることにした。


なんでハイジってこういうムダなウソをつくんだろ。

真に受けて心細くなったりして、損した。


「待てって」


足を出したその時、背後から腕を掴まれた。

反射的に顔だけ横に向けて、睨みつける。


「何よ、もうくだらないジョークはいらないから」

「ふーん。そーいう態度とるの。へ~。せっかくこの俺が親切にしてやったのによ」

「どこが親切?余計なお世話よ」

「うっわー可愛くねー!!」

「ふん!」


ホント、ワケわかんない。

ハイジといるとストレス溜まる。

ぷいっとそっぽを向いたら、「ブースブース」とブスを連呼された。

目を閉じて精神統一する。
ハイジの存在を頭の中から完全に消し去り、殺意の衝動をどうにか抑え込む。


相手にしない私に飽きたのか、やがてハイジは静かになり、



「もう知らねーからな。俺には関係ねーし」



と、憎たらしいセリフを吐いて教室を出て行った。

出ていく間際にチラッとこっちを振り返ったので、
シッシッと手で払うと、青筋立ててドアを激しく鳴らして去っていった。