「散れ、見せモンじゃねーぞ」
ハイジも同じことを思ったのか、眉を寄せ、不機嫌を隠そうともしない顔で、教室の窓や入り口から覗いているギャラリーに向かって吐き捨てた。
途端に、蜘蛛の子を散らすように他のクラスの生徒たちは渋々立ち去っていった。
けれど去り際、女子たちが私に投げてくるその目には、“ブスのくせに”とでも言いたげな色がはっきりと浮かんでいた。
改めて思う。ハイジ達の影響力の大きさ、凄さ。
人の注目を浴びることには慣れているはずなのに、追い払ってくれたのは、私のためなのかもしれない。
素直に言わないだろうけれど。
「ジローさんに会わないほうがいいって……なんで?」
「お前、ショック受けるだろうからな」
「え……?」
ハイジは真面目な声で、そう告げた。
私が、ショックを受ける?
なんで?
「今は、会わねーほうがいいんじゃねーの」
「今は?じゃあいつならいいの?今はダメで、もっと後ならいいってこと?あんたが言う“ショック”って、時間で解決できるようなことなの?ジローさんも、会いたくないの?私は会いたいのに。今すぐにでも、会いたいのに。ねえジローさんどこ?あんたが隠したの?玉手箱の中?ジローさん返してよ!」
「だあああ!うっせー!ウゼー!!」
一度に聞きすぎたのが悪かったのか、ハイジはぷりぷり怒っていた。
だって、あんたが悪いんでしょ。
ショックって何なのか、脅かすだけ脅かして教えてくれないんだから。
「……私、会えるでしょ?ジローさんに。会っていいんだよね?だって──約束したもん」
優しい声で、言ってくれたもん。
『またな』って。
「会うことにはなるだろうよ。俺はその前に忠告してやっただけだ」
傲慢な眼差しのハイジに、もう言い返す気にもなれなかった。
というより、何を警告されているのかもわからず、心の準備なんてできるはずがない。
「それよりもも、アレお前のダチか」
唐突に話題を変えて、ハイジがくいっと顎をしゃくった。
その先には、少し恥ずかしそうにしながらケイジくんと話している小春の姿。
「そうだけど……それが何?」
小春を険しい目で見つめるハイジを不審に思い、私はヤツに視線を向けた。


