「ももちゃん、おはよー」
一人で喜んだり落ち込んだり、感情の波を忙しく乗りこなしていたら、校門の前で声をかけられた。
「小春!……と、かっちゃん」
「……なんか、俺はあんま嬉しくなさそうだねーももちゃん」
そこには、ふにゃっと笑う小春と、隣で苦笑いのかっちゃん。
小春とかっちゃんが一緒に登校してくるのを初めて見たから、凄まじいキューティーオーラにあてられ、意味もなくキュンキュンしてしまう。
別にかっちゃんがどうとかではなく、圧倒されただけなんだけどね。
「いや、そういうわけじゃ……アハハ」
それにしても、かっちゃんも白鷹ファミリーの一員。
あのちょっとコワモテな“鷹”メンバーの中に、このキュートな彼が混ざってるの?
かっちゃんも……ショッカーの卵なの!?
やだなあ……すごくオシャレさんで可愛らしいのに。全身黒タイツなんて彼には似合わないよ。
どうせなら美容師とかショップ店員とか、そっち方面に進んだ方が合ってると思うんだけどなあ……。
「あの……ももちゃん?俺、何かした?どこか変?」
かっちゃんが控えめに声をかけてきて、ちょっと不安そうな顔をしていた。
どうやら私は、彼の将来を勝手に案じながら哀れみの目で見ていたらしい。
「あ、ううん。何でもない」
「そう?ドキドキするよ、そんな目で見られたら」
「ご、ごめん」
「いーよ、変な意味じゃないんならさ。ももちゃんの目力にやられちゃいそー。ね、小春ちゃん」
「うん」
にぱっと笑うかっちゃんと小春の周りには、爽快な風が吹き荒れていた。
爽やか過ぎて、私は近寄れなかった。
しかしかっちゃん……彼女いるくせに、いいのか。小春とこんなに親密で。
さっきの飛野さんと美女の関係と被って見えて、悶々としてしまう。
三人で歩きながら校舎に着くと、それぞれ教室に向かった。
小春に「昨日、朝美ちゃんとどこ行ったの?」と聞かれたけど、カラオケに連れていかれただけって答えた。
翔桜の男達に襲われたなんて、言えるわけがない。
タイガ達が助けてくれたからこそ無事だったけど、小春に余計な心配はかけたくなかった。
「今度は私も誘ってね」
そう言う小春に、私は笑って頷いた。
昨日のことを思い出しただけで、ゾクリと背筋が震える。
ただただ、怖かった。
覆い被さるような男達の影。
あの時、タイガとハレルヤさんが来てくれなかったら──。
想像するだけでも恐ろしくて、ぐっと拳を握った。
廊下を歩けば、今日も色んな視線が突き刺さる。
田川の件だけじゃない。
白鷹ファミリーの中でも一際目立つ、風切兄弟と突然親しくなってしまったからだ。
そう、みんなにとっては“突然”のこと。
今まで接点がないように見せて、彼らは私を守ってくれていた。
でも、今は違う。
私の願いを受け入れてくれた。
“仲間”なんだから、胸を張っていればいい。
近づきたくても近づけない風切灰次と慧次に、どうやって取り入ったのか。
探るような目つきが、絶えず私を追ってくる。
だけど、気にしない。
私はもう、未来を信じるって決めたんだ。


