「たぶん俺が風呂入ってる間だ。あがってきたら、『忘れてたぜ』とか言ってあの人にスマホ渡されてよォ……やけにニヤニヤしてたし、なーんかおかしいと思ってたんだよなぁ……」
「え……じゃ、じゃあ電話かけてきたのも……?」
「電話!?電話もあったのか!?」
「う、うん」
はあ、と長いため息をつくと、ハイジは片手で顔面を覆った。
肩を落としたその姿は、思わず同情してしまいそうなほど気の毒で、嘘じゃないってことだけは伝わってきた。
それからハイジは、「あの人前科あんだよ、前も違う女に俺の知らねえうちにLIMEやら電話やらしてたんだぞ!?」と私に鬼気迫る勢いで訴えてきた。
そして、本当にこの世から始末しないといけないのは、この緑ボーズじゃなくて金髪デビルの方なんじゃないかと思った。
ハイジからの奇妙なLIMEと電話の謎も解明されて、一つわだかまりが解けた。
「お前、まさか俺からだと思ってあのLIMEを真に受けたんじゃねえだろうな」
「は?」
ほんのり照れたように、睨みをきかしてくるハイジに私は眉をひそめる。
正直あんなメッセージ送られてきたら僅かにでもドキリとはしたけれど、それより何より、気味が悪いとしか思えなかった。
「ついに頭やられちゃったのかと思っただけ」
って言ったら、ハイジは無言で後ろから羽交い締めにしてきて、私のほっぺたを思い切り引っ張ってきた。
「いひゃいいひゃい!」と騒いでも容赦なく、じんじんする痛みに涙目になる。
コイツは一生、紳士にはなれんだろうと思った。
「んなこたぁ、どーでもいいんだ。それよりお前……ケイジに何であんなこと言った」
私はほっぺたをさすり、どーでもいいならここまでしないでよと、ヤツに心の中で悪態をつきながら……ハイジの言葉に首を傾げた。
「あんなこと?」
「……昨日聞いたんだよ、アイツに」
「何を?」
「やっと素直になったんだろ?ももちゃん」
ハイジの口元からは笑みが消え、黒い瞳で私を見据える。
素直になる?
ケイジくんに昨日、言ったこと……。
思い当たるのは、一つだけ。
あの言葉だけ。
“私、みんなの仲間になりたい”
ハイジが指しているのは、これじゃないんだろうか。
その一言が持つ意味を、軽く捉えてるわけじゃない。
それがどれだけ重要なことかって、自覚はしているつもり。
今までは嫌々付き合わされていたことを受け入れて、一緒にいる。
私が、決めた。
「言ったけど……だから何なの?」
「なんで、アイツなんだよ」
わからない。
ハイジの機嫌が悪くなる訳も。
どうして、そんなことを聞いてくるのかも。

