沈黙を破ったのは、飛野さんの方だった。
「……見てた?見てたの?」
冷や汗を流しながら聞いてくる飛野さんに、放心状態の私はまともに頭が回るわけもなく。
「いいえ、見てませんとも。私はなーんにも見てませんとも。美人な女の人が飛野さんのほっぺにチューしてたとか、パンツの心配してたとか、あの人が飛野さんの前でしかパンツを脱がないだとか、私は何にも聞いてないし、見てませんとも……」
「一部始終見てんじゃねーか」
「私、飛野さんのこと信じてたのに……仲間を裏切るような人じゃないって、信じてたのに……」
「待て、落ち着け。な、花鳥。冷静になれ。お前、何かすげえ勘違いをしてるだろ?」
飛野さんの冷や汗はさらに倍増していた。
怪しさ満点で、どう見ても後ろめたい人にしか見えなかった。
飛野さんが、ジローさんの彼女と浮気しちゃうなんて……あの、一番誠実そうな飛野さんが……。
これじゃ、男性不信になりそうだよ……。
昨日の今日でこんなの見るなんて、心臓に悪すぎる。
「純情なフリしといて……ひーちゃんのフシダラものーー!!!」
「おい、お前までひーちゃんって呼ぶとはどーいうことだ!──って、待て!!逃げんな!!っつーか前にもこんなことあったよな!?」
私は全力で、飛野さんの前から逃げ出した。
後ろから引き止める声が聞こえてきたけど、無視してひたすら走る。
どうしよう……ハイジやケイジくん、タイガはこのこと知ってるのかな……。
ジローさんは、きっと知らないよね。
秘密の関係なんだろうし……。
でも、あの飛野さんが後輩の彼女と浮気なんてするんだろうか。
パンツで赤面しちゃうような、純情なにーちゃんが。
……ていうか、あの美女って本当にジローさんの彼女なんだよね?
待てよ。本当に?
私の思い込みじゃないの?
もしかして……
飛野さんの彼女じゃないの!?
そうだ、その可能性があるじゃん!!
はっきりジローさんに聞いたわけじゃないし!!
私が勝手に決めつけてただけだ、きっと!!
“意外とキス、上手いんだよね。したことある?ジローと”
……はあ。そうだった。
あの人、ジローさんとちゅーしてたんだった。
しかもジローさん、あの人と普通に話してたし。
手を繋いだりもしてたし。
私と違って、ちゃんと“女の子”として扱われてた。
あーもう、ワケわかんないなあ……。
どうなってんの?
ちょっと乱れすぎじゃないの!?
い、いかがわしい!!


