……これが世間一般でいう、“小悪魔”ってやつなのかしら。
間近で目にした私には、レベルが高すぎた。
その高等テクを習得するなんてことは一生無理だろうなと、憧れの小悪魔ギャルへの道を諦めざるを得なかった。
そもそも、作りからして違うんだ。
美女が最新式のドラム型洗濯機なら、私は……二層式洗濯機。
……ふっ、私って古風な女。
いいもーんエコだもーん。
なんて、フォローにすらならないフォローを自分でしていると。
「お前さぁ……スカート短すぎじゃね?」
「えー、そうかな?これくらい普通だよ?」
「いや、短けーって。あんま良くねえだろ」
「冬也、心配してくれてるんだ?あたしのパンツ、他の男の子に見られたくないから~?」
「パ、パンツってお前……!!」
「だいじょーぶよ、女子校だもん」
ああ、飛野さん……。
完全に美女のペースに飲まれちゃって……半分遊ばれちゃって……。
パンツなんて単語くらいで、そんな真っ赤になっちゃうなんて……。
私のパンツチェックを勝手にしてくれちゃったあの双子に、飛野さんの爪の垢煎じて飲ませてやりたい……。
「でも冬也がそう言うなら、もうちょっと長くしちゃおっかな。パンツ見せるのは、冬也だけでいいもんね。……脱ぐのも、冬也の前だけだし」
「っ!!」
はわわわわ!!
ダメだ!KOだ!レフェリーストップだ!!
飛野さんが変なポーズで固まってる……!!
「あっはは!やだー、ジョーダンだってばー!じゃあ、あたし行くね?冬也、いつもあたしのことを想ってね!」
美女は固まったままの飛野さんの肩をバシバシ叩き、極上スマイルで手をひらひらと振って、車の中に戻っていった。
高級車が静かに走り去ると、飛野さんはようやく息を吹き返した。
髪をガシガシ掻きながら、まだ赤い顔のまま、ピンクのバッグを大事そうに見つめている。
私は頭の中が混乱していて、美女と飛野さんのラブラブ──というよりはもう、イチャイチャに近いやり取りに現実逃避しかけていた。
口をだらしなく開け、目も生気がなく虚ろで。
見るに耐えない悲惨な顔で立ち尽くしていると……
不意に飛野さんが振り返り、ばっちり目が合った。
「は、花鳥……!!」
飛野さんは究極ブスに成り果てた私を見た瞬間、ビクッとなった。
お互い無言の中、スズメのチュンチュンという鳴き声と、通り過ぎる小学生たちの笑い声だけがやけに響いていた。


