気まぐれヒーロー2




一瞬、思考が止まった。頭が真っ白になる。


なんで……なんで、あの女の人がここに?


脳裏をよぎったのは、あの夜のコンビニでの光景。

ジローさんと親しげに寄り添っていた彼女の姿。

ジローさんも、優しく彼女を見つめていた。

“ハナ”──あのとき、そう呼んでいた。


本当に綺麗な人。

同じ女として信じられないくらいに。


今日もやっぱり眩しい。

凝ったデザインの可愛い清蘭女学院の制服を着ていて、どう見てもお嬢様。
あの車に乗ってる時点で、間違いない。

彼女の周りだけ、世界がキラキラして見えた。

さっきまでジローさんに会えるって浮かれてたのに、
一瞬でその気持ちはしぼんで、胸の中の熱も冷めていった。



「ハナ、どうしたんだよ」

「ふふっ。良かったぁ、間に合って。はい、コレ。寝坊しちゃったんだけど、どうしても冬也に渡したくて。頑張って作ったの」



美女はにこっと笑って、小さなピンクのバッグを飛野さんに渡した。

……お弁当?

でも、なんで彼女が飛野さんに?



「一日くらい、いいのに。毎日もらってんだから」

「ダメよ、一日だってサボったら意味ないもん。冬也のためだったら、苦にならないんだから。それに、自分のためでもあるのよ?」



なんか……飛野さんとあの美女は、やけに親しげで。

彼女が飛野さんに向ける笑顔は綺麗なのに、それ以上に、胸の奥をくすぐるような可愛さがあった。



「ね、新しいピアス買ったの。見てみて」



さらりと髪をかき上げ、耳を見せる美女。

飛野さんは言われるままに身を屈め、顔を近づけた──その瞬間。

私は見てはいけないものを、見てしまったんだ。



美女が、飛野さんの頬に柔らかくキスをした。



これは……何……?


あの人、ジローさんの彼女じゃないの?

どうして、飛野さんのほっぺにキスしてるの?



「っ、お前……!!」

「なぁに?唇がよかった〜?」

「あのな、そーいうことを言ってんじゃねーの」

「んふふ、わかってるってば。唇にしちゃったら、冬也怒るもんね。だからほっぺで我慢したんだよー?」

「……負けるよ、お前には」



飛野さんは慌てて彼女から離れ、頬を手で押さえた。

真っ赤になったその顔を、美女はイタズラな笑みで見上げる。


きっとこういうの、慣れてるんだろうな。

自然すぎて、まるで絵になってる。

女の私ですら、ドキドキしちゃうっていうのに……。


純情な飛野さんは完全にペースを崩されて、最後は小さく息を吐いて、観念したみたいだった。