「うわっ!や、やめろ!!」
ビシビシと襲いかかるダンゴムシを、ハイジは必死に腕でガードしている。
なんという低レベルな争いなんだ……。
小学生かコイツらは。
ダンゴムシバクダンに、そこらのバッタで応戦するハイジ。
「やめんかああああ!!」
ああもう、イライラする!!
「生き物で遊ぶなパーンチ!」
「うっ、」
「命は大切にキーック!!」
「ぐむっ」
パンチはケイジくんのみぞおちに、キックはハイジのゴールデンボールにまたまたクリーンヒットした。
空き地に転がる緑と赤を、息を荒げながら見下ろしていると──
“奥さま、見ました?あのコ、真面目そうなのにあんな大きな男の子達を一人で負かしちゃって……”
“ええ、見ましたわよ~。怖いわよね~。最近のコは大人しそうでも、何するかわからないから……”
ヒソヒソと話す近所のおば様たちの声が、耳に飛び込んできた。
い、いかん。
このままでは、井戸端会議のネタにされてしまう……!!
倒れている二人を置き去りにして、私は全速力で逃げ出した。
「はぁ……もー疲れる……」
走り続け、学校が見えてきた頃にようやく速度を落とす。
息を整え、ゆっくり歩き出した。
一人で歩く街は静かで落ち着いている。
道行く人も、私になんて目もくれない。
シャッターが下りた商店街、鳥のさえずり。
それらが、穏やかな朝を演出してくれる。
そうだ、これが本来の登校風景だった。
なのに、あの二人が絡むと全部ぶち壊されてしまう。ロクなことにならない。
これからもこんな疲労に悩まされると思うと、気が重くなる。
一人って楽だなぁ……と、束の間の平和を味わっていると──
前方に、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
黒髪で、背の高いスラリとした男の人。
あれは、飛野さんだ。
飛野さん……迷ってないのかな。
ちゃんと学校までの道、わかってるんだろうか。
声をかけようか迷っていると、一台の車が音もなく近づき、飛野さんの横で停まった。
見るからに高そうで、お金持ちオーラ全開だ。
たぶん、リムジンってやつじゃないのかな。
テレビでしか見たことないから、自信ないけど。
そして、その高級車から降りてきたのは──
「冬也!!」
あの、美女だった。


