「いってきまーす」
学校へ行く支度を終えて、後ろからついてくる緑と赤と共に、家を出た。
玄関まで見送ってくれたお母さんは終始頬が緩みっぱなしで、お父さんのことはほったらかしだった。
「なあ、ももちゃんのお母さん若いなぁ。めっちゃキレイやし。何歳なん?」
「えーっと……23で私を産んだから、38かな」
「あー、やっぱ若いやん。お父さんの方がけっこう年上やろ」
「うん。6つ上だよ」
「ももちゃんさぁ、お父さんそっくりやな」
「……そうだね」
「そっか~、38かぁ。あんだけ綺麗やったら、イケるわ」
何が!?
普通の顔して、意味深な発言をしてくれちゃったケイジくん。
ハイジとケイジくんの間に挟まれながら、私は学校へ向かっていた。
母は18でお兄ちゃんを、5年後に私を産んだ。
もう40近いけど、実年齢よりずっと若く見える。
あれだけハジけてても、確かに母は美人だ。
私もお母さんに似たかったなぁ──なんて、百回に一回くらいは思ったりする。
そうすれば、お兄ちゃんにも似てたのに。
「本当に兄妹?」なんてからかわれたりしなかったのに。
お兄ちゃんが、落ち込む私のためにケンカを売りに行くこともなかった。
でも私はお父さんも好きだし。
いいんだ。何も恥じることなんてない。
「ハイジ、お前南高に女の子の知り合いおる?」
「あ?……なんで」
「今あっこで、めっちゃお前の噂流れとるらしいで。『ハイジくんに遊ばれて捨てられた~』って南高の子が言いふらしとるって。ワルモノやん、お前」
「南高の女?知らねーよ、誰だよソイツ。いたかもしんねーけど、いちいち覚えてねーよ」
歩き慣れた通学路を進む。
両隣には長身でド派手で、目立ちまくりな双子。
通行人の視線を独占しちゃってる。
朝っぱらから二人の会話は、理解不能だった。
ニヤニヤしてるケイジくんに、素っ気ないハイジ。
私はそんな彼らの会話に入っていけるわけもなく、黙々と一人歩いていた。
すると突然、ケイジくんが私の肩に腕をまわし抱き寄せてきて、
「わわわっ」
「今の聞いた~?ももちゃん、あんなロクでもない男と付き合ったらあかんで。平気でヤリ捨てするような男やしな~。付き合うんやったら、俺みたいなんにしときや。俺はいいで~。めっちゃ尽くすしなぁ。セックスも満足させてあげんで」
妖しげな声で囁かれて、ぶっ倒れそうになった。


