「そんな格好で帰るつもりか?」
ハイジが、いつになく真面目な顔でそう言ってきた。
どんなつもりでコレをくれたのか、すぐに察した。
タイガの制服の上着を羽織ってるけど、その下は翔桜の男たちに引き裂かれた、ボタンのないボロボロのカッターシャツ。
言われてみれば、こんなひどい格好で帰れるわけない。
このシャツを見られたら、何かあったのがバレて、両親を余計に心配させてしまう。
「……ありがと、ハイジ」
なんだか、胸がきゅうってなった。
ここまで私の事を考えてくれてるんだ、って。
私ですら気づけてなかったのに。
ハイジの優しさに、ぐっときた。
いつも意地悪されてるだけに、余計に。
コレ誰のなんだろとか、どこから調達してきたんだろとか、気になることはいくつかあったけど。
「返さなくていいからな、ソレ。もうお前のだし」
「でも……」
「いーって。今まで一回も着たことねえし、この先も着ねえって言ってたから」
「……ん、わかった」
“言ってた”ってことは、このシャツの持ち主は女の子で……きっと、ハイジの知り合いの中の一人なんだろうなって思った。
「あの……覗かないでね」
後ろで着替える前に、飛野さんは心配無用だけれど、ハイジには一応釘を刺しておいた。
案の定ハイジは、
「アホか、誰がお前の色っぽくもなんともねえ着替え覗くんだよ!いいか、俺はチチはD以上ねえと興奮しねーんだよ。なあ、飛野さん」
バッサリと私の貧乳を否定し、さらには飛野さんにまで同意を求めていた。
「いや、俺はでけえよりは小せえほうが……って、何言わすんだお前は!」
ハイジのフリに乗っかっちゃった飛野さんは、純情なのにうっかり本音をぽろりしていた。
やっぱり顔は赤かった。
さっさと着替えを済ませると、ボロボロのカッターシャツはハイジが処分してくれるらしく、引き取ってくれた。
タイガの上着も「いい」って言ったのに、そんなの持って帰ったら結局怪しまれるからと、取り上げられてしまった。


